コラムタイトル

 

怪鳥音への道 (episode 6)

1975年の正月。
お年玉を持ってレコード屋に突撃する。
もちろんブルース・リー関連の最新盤『ドラゴンへの道』のサントラLPを買わんが為だ。
そこで少年は「チャック・ノリス(帯に隠れて右手しか見えないけど、当然!オレたちはすぐにわかったはずだ!)と対峙するブルース・リー」のジャケットを発見する。
「おお!これだぁ〜〜〜〜!
・・・あれ、何か違うぞ・・・帯に書いてある風間健?・・・なんで風間健が出てくるの?
なになに・・・『ブルース・リー讃歌』だとぉ?
くそう。これは覚悟を決めなければならん。
もう少し待てば「ちゃんとしたサントラ」が発売になるんだぞ。
帯の裏に(新春発売予定)って書いてあるじゃないか。
こいつは今までオレをさんざん騙した「にせもの」のようなモンかもしれんのだぞ。
どうする、オレ?」
この経験をしたヤツは日本に100人は居たはずだ。
その中で清水の舞台から飛び降りたチャレンジャーも30人くらいは居たに違いない。
そいつは帰宅後、ターンテーブルに載せた途端に前年の8月30日に柴田純が残した名言を絶叫した事だろう、
「なんじゃこりゃあ」と。
1曲目の「ドラゴンへの道」(日本制作のマイレメの歌入りメインテーマ)のイントロからいきなり挿入されているニセ怪鳥音!
ナレーションでブルース・リーを「貴様」呼ばわりする風間健に嫌悪感が!
風間株急落だ。
(今聞き直してみてもガッツ石松の声にしか聞こえないから困る)
聴き終えた者はこう思ったに違いない。
「やっぱりか。予想通りだ。
(予想以上に酷かった、と思った者も居ただろうけど)
これで『サントラ』には万全の期待を持てると言うものだ。
発売が楽しみだ!」と。
だって、これは「そう思えないような人は購入する筈の無いアルバム」だもの。
覚悟を決めて買った筈なのだ。
無論、
「何はともあれ全て買い揃える人」や、「ジャケ買い」の人、 つまり中身にさほど興味の無い人もいたかもしれないし、 何の疑問も持たず「おお!これブルース・リーの新譜じゃん」とか言って 内容を確認せずに購入した粗忽な人やそそっかしい人も居ただろう。
「孫がドラゴンのファンでのう。プレゼントなんじゃあ」なんておじいちゃんとかね
(それで『讃歌』を貰った孫が不憫だなぁ。
「あ、ちょっ、ま......おじいいちゃん、これちがっ......いや...あ〜ありがとう」て感じか)。
『讃歌』ほど「ドラマチックじゃないドラマ」を演出してくれたアルバムは他に無い、 と思い込んでいる。
他のアルバムは「出会いの1枚」だったり「名盤」たっだり「愛聴盤」だったり 良いドラマがありそうだ。
こいつにはせつなくほろ苦い、そして苦笑いや挫折等、拭えない「負の資質」がある。
逆に、似たような物であるにもかかわらず、 純然たる「バッタもん」には、許せる要素がある。
「騙されても笑ってしまえる」し、今となってはレア感もあるし、 資料的側面から言っても「貴重」だったりするのだ。
そして、『讃歌』はちゃんとCD化された事が無い。
「大丸商事の第3弾」として『Return Of The Dragon』とのカップリングで CD化された時は「鬱陶しいK氏のナレーション」はカットされていたからだ。
曲に被さっている声だけをカットしているのではなく、 声が被さっている部分はすべてカットしているので、 (「猛龍ローマに到着」では、ナレーションが被さっている部分を サウンドトラックの音声と差し替えているので、 声だけをカットする事に成功している。
つまり、大丸商事は映画の音声は持っているが、 音楽のみの素材は持っていない、と言う事だ) 「闘技場(コロシアム)の決闘」4分10秒から3分50秒に短縮され、 「マイ・ウェイ」3分30秒から2分35秒に短縮されている。
「闘いのあと・・・」は全面カットの憂き目にあっているのだ!
だから「完全版」は、 あの時「決断をした者」だけ(一部、件の例外があるとしても)が聴く事が出来る! 特権だ!
(USEDってのもあるんですがね......まぁ、ロマンの為に見て見ぬふりをしてね) だからオレは行く。
この道を。
この遠く険しいこの道を。
このドラゴンへの道を。
風間健はどこまで行けたのだろう?
相当行ったことだろうなぁ。
みんなはどこまで行けた?
自分は、みんなと出会ってからは 険しい道じゃなくなった感じなんだけど。