薬開発に挑む男の活劇
 『小さな命が呼ぶとき』(Extraordinary Measures) 監督 トム・ヴォーン

高知新聞「第163回市民映画会 見どころ解説」
('11. 2. 5.)掲載[発行:高知新聞社]


 3人の子供のうち幼い2人が難病「ポンペ病」で余命わずかと告げられた敏腕ビジネスマンが、わが子のために自ら治療薬の開発に向け挑んだ物語だ。だが、実話ものと難病ものという“不易流行ジャンル”を足し合わせた映画だろうと高を括って観ると、大いに意表を突かれる。全く掛け離れたビジネスものだったりするところが、なかなか油断できない魅力だ。

 考えてみれば、『インディ・ジョーンズ』『ハムナプトラ』という、冒険活劇シリーズでともに名をはせたハリソン・フォード(偏屈者の天才科学者ロバート・ストーンヒル博士)とブレンダン・フレイザー(難病児の父親ジョン・クラウリー)がコンビを組んでいるのだから、ビジネス活劇の趣にいかにもふさわしいキャスティングだ。

 さすがに年も年だし、話が話だから、アクションシーンはない。けれども、それぞれの人生を掛けた夢と願いである治療薬開発が、冒険活劇さながらのスリリングでダイナミックな展開で描かれている。

 そして、いかにもアメリカでないと、とても成立しそうにない物語だと思えるところが非常に興味深い作品でもある。『エクストラオーディナリー・メジャーズ』(途方もない手だて)という原題の示す“桁外れ感”は、物語においても人物像においても、いかんなく発揮されていた。

 夢の実現に向けてぶつかり合う中で、博士が開発チームから外されるといった“冷酷な裏切り”も描かれる。だが、博士はチーム外しの張本人であるジョンへの助言として、報告書の分析を行う。その理由を博士が車を運転するワンカットで示していたのが、映画の常套表現とはいえ、なかなか鮮やかだった。このカットが邦題を引き出したのだろう。
by ヤマ

'11. 2. 5. 高知新聞「第163回市民映画会 見どころ解説」



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