『マーベリックの黄金』(Catlow)['71]
『西部無法伝』(Skin Game)['71]
監督 サム・ワナメイカー
監督 ポール・ボガート

 奇妙な友情を結んでいるバディムービーとも言うべき、同年製作の西部劇を続けて観た。

 先に観た『マーベリックの黄金』は、全く知らなかった映画だ。『マッケンナの黄金』['69]にあやかった邦題なのだろうが、所有者不在と訳されていた“マーベリック”の金塊を巡る三つ巴四つ巴の争奪戦が、敵味方の判然としない曲者の顔なじみの間で繰り広げられる話だった。お尋ね者キャットロウ(ユル・ブリンナー)と訳あり保安官ベン・カウアン(リチャード・クレンナ)の奇妙で軽妙な友情といい、トンカワ族やらアパッチ、セリ族などのインディアン、メキシコ軍、牧場主と泥棒一味、首領と手下、愛人、いったい誰と誰が敵味方で、金塊の行方はどうなるのか、物語の設えは非常に面白そうなのに、何とも見せ方に締まりがなく、ぶつ切りで、唖然と退屈が交互に訪れつつも、役者の魅力で見せるというような作品だった気がする。

 荒くれどもを率いてライフル銃でぶっ放す妖艶なロジータ(ダリア・ラビ)も、貴婦人やら阿婆擦れやら知れないクリスティーナ(ジョー・アン・フラッグ)も、もっともっと活かしてほしかった。キャットロウの仕込み杖ならぬ仕込みブーツが目を惹いたけれども、何とも勿体ない映画だったように思う。


 続いて観た『西部無法伝』もまるで知らない映画で、オープニングに現れた馬に乗ったクインシー・ドルー(ジェームズ・ガーナー)が黒人のジェイソン(ルイス・ゴセット・ジュニア)を縄で引いている姿に、主役と思しき人物が何故と驚いていたら、自由州生まれの黒人詐欺師を相棒にして南部の奴隷州を回り、人身売買詐欺を働く二人組の話だった。それゆえに、食わせ物の人物が加えて登場するのだが、豊かな胸を実らせた女掏摸ジンジャー(スーザン・クラーク)の人物造形と、彼女に一杯どころか、二杯も三杯も食わされるクインシーの大らかさというか、頓着の無さが面白く、呆気に取られた。

 稼業も稼業だからか、騙し騙されることに善悪とかの倫理観の欠片もない彼らの姿がいっそ爽快なほどで、原題が示すとおり、それをゲームとして生きている連中だった。まさに息をするように嘘を言うのだが、かといって非情で冷たいのでは決してなく、してやったり感が堪らないという感じだ。クインシーは手違いで本当に奴隷として売られてしまったジェイソンの救出に精出すし、ジェイソンは惚れた奴隷娘ナオミ(ブレンダ・サイクス)の救出に精進する。クインシーが牢に入れられたと知り、彼らから盗んだ大金を携えて返却に戻って来るジンジャーも加えて、三人のゲーム感覚で臨んでいる生きざまにあった軽妙な味わいが気に入った。

 クインシーとジェイソンの醸し出している対等感が好もしく、カモ目線の付け込みから始まったクインシーに対するジンジャーの気の持ちようと、それによって形成されていく相棒関係が好もしかった。ジェイソン救出の旅を続けるクインシーがジンジャーから理由を問われて他にすることもないと答えていた処世観も気に入った。何とも異色の西部劇だったように思う。結局はバディより女房という最後のオチには少々落胆したが、考えてみれば、ほかに始末のつけようがなかった気がしなくもない。それぞれが真のベターハーフを得て、めでたしめでたしということにしておこうと思った。クインシーにはシカゴの銀行に預金1万ドルが残っていたはずだ。

 それにしても『愛と青春の旅立ち』['82]のフォーリー軍曹で印象深いルイス・ゴセット・ジュニアがこのような役どころで西部劇に出演していたとは思い掛けなく、そのユニークでタフな人物造形に感心した。本来、ガンファイトが見せ場となる西部劇でありながら、そういう場面の登場しないところが目を惹く本作にて唯一現れるのが、彼の演じたジェイソンによる阿漕な奴隷商人プランケット(エドワード・アズナー)殺しであることが印象深い。
by ヤマ

'23.11.11,15. BSプレミアム録画



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