『悪魔は誰だ』(Montage)
監督 チョン・グンソプ


 都会でもあまり話題にならなかったようだが、昭和レトロの地元劇場での上映の最終日最終回、観逃さずに済んでよかった。実に面白かった。なかなか見事な脚本・演出・編集だったように思う。

 死亡者が出たという結果責任と因果の部分(そこが重要との意見もあろうが)を除けば、娘を救いたいとの思いからであれ、復讐の一念であれ、娘を誘拐されたハギョン(オム・ジョンファ)と孫娘を誘拐されたハン・チョル(ソン・ヨンファン)のしたことが、切実な想いに駆られ我が身のリスクを顧みず非道に突き進む誤った親心という点でも、手を染めた犯罪そのものの手口の点でも、全く同じであったことに痺れた。この点に限らず、いろいろなところで、対照と相似の利いた実に鮮やかな脚本だ。二つの誘拐事件の犯人とも何とか身代金を手に入れはしていても、決して“まんまと”ではない苦みの利いているところがいい。

 成程そう来たかと唸らされた最後の取引の成立も対照と相似が実に利いていて、警察側の決めつけ捜査の求めた顛末とも、ハギョンの仕組んだ巧妙なトリックの目論んだ顛末とも、まるで同じ結果をもたらしつつ意味が異なっていたから、強引に収めた力技のようには映らず、納得感と鮮やかさのほうが印象に残る。警察側と元刑事チョンホ(キム・サンギョン)の位置関係が効いていたように思う。

 それにしても、あのシルエットの男の姿が明かされた時には意表を突かれた。時間軸をそのようにずらせていたのかと驚きながらも、反則感よりも納得感のほうが優る物語世界を作り上げていたことに感心したが、あとで原題が“Montage”だということを知り、改めて唸らされた。確かに、映画ならではの造形だったように思う。大したものだ。
by ヤマ

'15. 6.12. あたご劇場



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