【伊達市】
ツアー最初の訪問先は伊達市。「北の湘南」とも呼ばれ、北海道のなかでは雪が少なく、温暖な気候から、移住者に人気の町です。市と住民が協働で高齢者や移住者が住みやすいまちづくりを進めています。たとえば
@会員制乗り合いタクシー「愛のりタクシー」
A高齢者に安全安心な住宅「伊達版安心ハウス」の認定基準を創設
B移住者の相談にワンストップで対応する「住んでみたいまちづくり課」を役所内に創設
C移住体験のための家具家電付き民間アパートを紹介
また子供の教育環境として、シュタイナー教育を実践する「いずみの学校」が99年に設立されています。
【伊達市のつづき】
伊達市の眺望を背に話をしている方が吉井さんです。吉井さんも2001年に東京から移住し、株式会社アップデートを設立し、伊達市の生活情報発信を続けています。定番のポータルサイト「むしゃなび」は年間45万アクセスを受けるほどの人気。そのほかフリーマガジン「そらみ」や各種ガイドマップを作っています。
市や商工会議所と連携して、町の魅力を掘り起こしたり、創ったり、紹介したりとコミュニティビジネスのモデルを示しているようです。常駐スタッフも何人か雇って、地域の雇用創出にも貢献しています。
【伊達市のつづき】
下に伊達市のイラストマップを貼ります。クリックすればPDFで大きな画面で表示されます。ご覧のように人口38,000人の小さな町に、公共施設、各所レジャー施設、温泉などがコンパクトに詰め込まれていて、居心地がよさそうです。
写真は市の東部にある体験型レジャー施設「イコロ農園」ここではハーブやリンゴなどを販売し、米作りの体験や焚き火、ピザ焼きなどが楽しめます。有珠山・昭和新山・羊蹄山・伊達市街地を一望しながら飲んだり食べたり1日ゆっくり楽しむには好適な施設です。

【壮瞥町】
壮瞥町は昭和新山、有珠山と活火山のある町として有名です。
そのため壮瞥町は火山を活用して、地学の研究や学習に役立つまちづくりを目指しています。
10月23日、町は「洞爺湖有珠山ジオパーク」として、世界ジオパーク(世界地質遺産)の国内候補地に決定しました。
なにはともあれ、火山見学に一行は向かいました。小学校の教科書で習った昭和新山と、1977年噴火と記憶に新しい有珠山を間近に見たいという抑えがたい欲望を禁じ得なかった面々は、しかし珍しい事物で、物見遊山の客を引き込み、観光振興を図ろうというまちおこしの原点を再確認したのでした。
【壮瞥町のつづき】
写真は有珠山展望台から昭和新山を眺めているところです。写真を広げて説明している人が、そうべつエコミュージアム友の会会員で壮瞥町の職員の松山さんです。
この後、ジオパークの拠点として整備している「道の駅 そうべつ情報館」に行き、壮瞥町の環境・景観行政の取り組みや地域の特産化を図り、いかにして産業振興を図るかについて、町のビジョンをお話し頂きました。
ジオパーク、あるいはシーニックバイウェイといったまちづくりを語る共有イメージをもとに、自然と共生し、地域の特産物などを活用した、持続的な地域経営への取り組みが積極的に取り組まれている様子が良く分かります。
【壮瞥町のつづき】
たとえば景観づくりの方法として、公募型看板撤去事業の実施や、地域景観協定の案づくりなどの取り組みがあります。
道の駅での懇談の後、地元観光果樹農家の阿野さんに連れられ、そうべつくだもの村でリンゴやブドウ、プルーン採りを楽しみました。阿野さんはくだもの園の村長であり、シーニックバイウェイ活動のリーダーとして、エコミュージアム友の会やNPO壮瞥観光協会と連携し、美しい景観づくり、魅力ある観光資源づくりに取り組んでおられます。
【洞爺湖きつつきカナディアンクラブ】
洞爺湖畔に建つ、ログキャビン風のホテル”きつつきカナディアンクラブ”。ここもツアーのこだわりチョイスです。
オーナーの佐々木正三さんは、木彫り彫刻家で、すべての建物をログキャビンで造った宿泊施設を造るのが夢でした。
特徴は建物だけでなく、食材は地元産を基本とし、お酒も地ワインとこだわりの料理が自慢です。
そして何よりの自慢が、すべての宿泊部屋から洞爺湖が一望できることです。
現在は長男の卓一さんとお母さんで経営しており、心のこもったもてなしが好評で、年間約3,000人の宿泊客のの1/3がリピーターとのことです。
ホームページや会報など、情報発信や交流でファンづくりにも熱心。URL:http://home.att.ne.jp/sun/kitutuki/
【洞爺湖きつつきカナディアンクラブのつづき】
最近はネットでの予約が半分を占めるようになり、電話応対の手間がかからない反面、手続きが簡単なため、キャンセルも多いと困り顔。
シーニックバイウェイに認定されたこと、今年洞爺湖で環境サミットが開催されたことなどで、住民の環境や景観に対する意識も高まったと感じている。しかし一方で、地方経済の衰退は壮瞥町でも変わらず、商店街の空き店舗の増加や、廃業するホテルなど、状況は深刻とのことでした。
写真は夕食を兼ねた交流会。協会が主催するツアーの第1回目ということで、伊藤滋名誉会長、笹原副会長、北大の小林教授などが駆けつけて下さいました。

【洞爺湖きつつきカナディアンクラブのつづき】
写真は宿泊室の窓から見えた朝景色。
ラウンジ棟のテラスでこれを眺めながら飲む♪夜明けのコーヒー♪は最高です。
洞爺湖周辺には冬のスキーのほかに、トレッキング、乗馬、ゴルフ、カヌー、各種セラピー、ガラス体験など様々なメニューが充実しています。

【洞爺湖きつつきカナディアンクラブのつづき】
左は宿泊棟の外観。窓から上の写真のような景色が堪能できます。
写真で分かるように、湖に面する斜面を段状に造成して、平屋造りの建物群が、景色に溶け込むように建てられています。
オーナーの理念としての、自然を大切に守りながら、環境と共生するビジネスモデルを体現しています。
こだわりの設えと、こだわりの食、いずれもが押しつけがましくなく、ごく自然に宿泊客に「自然に抱かれる心地よさ」を伝えています。
【ニセコアドベンチャーセンター】
正確にはニセコ町の隣、倶知安町にあります。
ニセコ周辺は世界有数の良質なパウダースノーが降る町として、毎年沢山のオーストラリアのスキーヤーが訪れるウィンターリゾートとして有名です。
オーストラリア人のロス・フィンドレー氏は、オフシーズンの夏も自然を楽しめる場として、94年にこのクラブを起業し、トレッキングやラフティングなどのメニューを開発しました。このクラブハウスの中には、アウトドアーグッズショップやレストランなどがあり、木の素材感を美味く活かし、しかも天井が高いことで、高級感があり、くつろげる雰囲気の上質なインテリアが特徴です。
【ニセコアドベンチャーセンターのつづき】
NACはもう一つ、海に近い忍路にもベースをもっており、海と山の両方を拠点にラフティング(ボート)、ダッキー(小ボート)、カヤック、マウンテンバイクツアー、キャニオニング(自然地形遊び)、トレッキング、ロッククライミング、クロスカントリースキー、スノーシューツアー、キッズキャンプ、企業研修向けチームアドベンチャープログラムなど年間36種類のコースがあり、さらにトライアスロン、デュアスロン、マウンテンバイクやカヤック、ラフティングのレースなどが開催され、夏も冬も老若男女が楽しめるアウトドアースポーツのメッカとなっています。
【ニセコアドベンチャーセンターのつづき】
左はレストランでの会食の写真。
テーブルの向こうに座っている人がロスさん。いかにもアウトドアー派という雰囲気の漂う、贅肉の無いし、頑丈そうな体格です。
今、ニセコには欧米の資本が押し寄せ、空前のリゾート開発ブームの真っ直中で、その先魁としてビジネスモデルを示した「時の人」にもかかわらず、実業家の雰囲気がまったく無く、ただの自然が好きな青年という印象です。
実際、リゾートビジネスの成功者としての信念とか苦労話とかを聴こうとすると、「特に頑張ったつもりはない、新しいことを始めるのだから障害はあってあたりまえ」というごもっともな返答。アングロサクソンの開拓者魂に一同納得。

【ニセココンドミニアム開発】
ニセコの住民が口を揃えて「リゾート開発バブル」と言う中、そのバブルの象徴と言えるコンドミニアム開発を見学しました。
北海道トラックスという会社は、オーストラリア資本による、一言で言えば貸別荘ビジネス。建物は分譲し、それをオーナーから賃借し、宿泊施設として日割り計算で貸し出し運用する。つまり開発のキャピタルゲインで儲け、さらに建物の運用を請け負うビジネスモデル。
左写真の建物は、最上階フロアーはたった2つに区切られているだけ。1区画120uでバスルームが3つ、テラスにはジャクジーもあり、これで9,000万円!
【ニセココンドミニアム開発のつづき】
これが9,000万円の眺めが楽しめる最上階のリビング。
応対してくれたのは大久保さんという30そこそこの販売責任者と、他に20代らしき男女3名。
なにも無いような田舎にモノトーンのモダンなマンションを建て、そこを宿泊施設として運用する。集客のために英会話や料理教室など長期滞在客向けのメニューを企画実施する。彼らスタッフはこの”新しいビジネスモデル”に夢中な様子。今後5年間に、2,000ベッドの開発を予定しているとのこと。
欧米の投資と強気の価格設定でニセコのリゾート開発をリードする夢を語っている若者たちと、90年代のリゾート法による開発の失敗を知っているオヤジたちの溝は深い。
【道の駅 ニセコビュープラザ】
国道5号沿い、羊蹄山を一望できる絶好の場所にニセコビュープラザはあります。
ここに日本で最初に株式会社になった観光協会があります。営業企画部長の加藤さんに、話を伺いました。
観光協会は道の駅の経営を受託しており、平成19年度の総売上は約5,800万円。その内訳は
1.物販事業(49.3%)
2.旅行事業(33.3%)  
3.町委託事業(7%) 
4.JR委託事業(2.3%)
5.その他(7.9%)
【道の駅 ニセコビュープラザのつづき】
売り上げの推移では、物販収入は順調に伸びているのに対し、旅行事業は平成17年をピークに翌年以降半減しています。これは逢坂町長が衆議院議員になったことの影響とのこと。逢坂誠二氏は日本で最初にまちづくり条例を制定し、役場のIT化を進め、観光協会を株式会社にするなど、当時人口4,500人ほどの小さな町の町長でしたが、その動向に全国の注目が集まっていました。町長の話を聴き、町を視察するツアーが町に押し寄せていたそうです。
加藤氏は旭川出身で、平成15年に株式株式会社化する際の公募で就職。余所者でこそ気づくニセコの良さや、しがらみがなく自由に人と交渉できることが自分の強みと言われた。伊達市の吉井さん、ニセコ町のロスさんなど余所者がまちづくりに大きな役割を担っているケースは多い
【道の駅 ニセコビュープラザのつづき】
一方、販売施設「道の駅」は、その成り立ちがユニークで、以前に農家の主婦が自発的に経営していた「直売所」が素。またNTT東日本が販売管理ソフトの開発モデルとしてビュープラザを使い、直売所から農家にインターネットで在庫情報が直に伝えられるシステムを開発。このお陰で農産物の欠品が防げ、売れ行きに合わせた迅速な品揃えが売り上げを伸ばしている。平成19年の売り上げは約5,800万円、観光協会全売り上げのほぼ半分を稼いでいます。
【おわりに】
今回16名の参加者のなかには、九州から参加して下さった牧さん(写真中央)や、地元北海道からは杉本さん、協会外から参加して下さった野口さん(写真右の女性)など様々な方々の応援で実施出来ました。
一日に2つも3つもまちづくりの現場を訪れ、毎回地元で頑張っておられる方々と議論をする、非常にハードな行程でしたが、大きな事故(Dさんが奥さんを置き忘れる事件以外は)もなく、無事に終わることが出来たことが、まずなによりと思います。
途中で帰られた方々を除く参加者の、ツアーについての評価は右の写真をクリックすると見られます。
このツアーは全国まちづくり会議という、NPO日本日本都市計画家協会の交流イベントの一環として実施されました。
この経験を活かして、全国のいろいろなまちづくりの現場を、いろいろなバックグランドの方々と巡る、楽しくてためになるまちあるきツアーを実施しますので、みなさん是非ご参加ください。
また、あそこの町が面白そうだから行きたいという要望もお寄せください。まずは下記HPまでアクセスしてみて下さい。
(http://www7b.biglobe.ne.jp/~machikan/)