Marits visor Op.12 |
マリットの歌 |
1 Kom bukken til gutten
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1 山羊よ、少年のところへ
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kom,kalven til mor, kom,mjauende katten i snehvide skor, kom,ællinger gule, kom frem ifra skjule, kom,kyllinger små som næppe kan gå Kom,duerne mine med fjærene fine! Se græsset er vådt; men solen gjør godt, og tidlig er det på sommer'n, men râb på høsten,så kommer'n! |
子牛よ かあさんのところへおいで! おいで 白い靴はいた にゃんにゃん猫! かくれんぼをやめて おいでよ黄色い子供のあひる おいで 小さいひよこたち よちよち歩きのひよこたち おいで きれいな羽根をした わたしの鳩たち! ほら 青草は濡れているけれど お日様が乾かしてくれる まだ夏は始まったばかり でも呼んだらすぐ秋がやってくるよ |
2 Solen skinner vakkert om kvaeden
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2 夕日が静かに沈んで
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katten ligger doven ud på hællen; ”To små mus, fløde af et krus, fire stykker fisk stjal jeg bag en disk, og er så god og mæt, og er så doven og træt,” siger katten. Kyllinghønen vingerne sænker, hanen står på et ben og tænker; ”Den grå gås styrer høj nok kås, men se til,om den kan nå en hane i forstand? Ind,ind,høner under tag, solen kan gærne få lov for idag.” siger hanen. ”Herregud,det er godt at leve for den,som slipper at stræve,” siger fuglene. |
ネコは暖炉でけだるそう。 「2匹の小ネズミ、 ジョッキの中のクリーム、 4切れの魚を 失敬して食べた。 お腹いっぱいで、 もう眠いや《 ネコがつぶやいた。 にわとりは羽を休め おんどりは一本足で物思いに耽る 「雁は空高く 飛び去っていくが おんどりの幸せは 別のところにある お前達めんどりとひとつ屋根の下 今日も夕日が沈んでいく《 おんどりがつぶやいた。 「神様、あくせく働かなくて良いのなら 生きるって素敵なことです《 鳥たちがつぶやいた。 |
3 Holder du av mig
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3 あなたが私を好きなら
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holder jeg af dig alle mine levedage; sommeren var kort, græsset blegner bort, kommer med vor leg tilbage. Hvad du sa' ifjor, husker jeg i år sidder som en fugl i karmen, kakker på og slår, synger lidt og spår lykke under solevarmen. Nu godnat,godnat! drømmen har mig fat, den om dine milde øjne og de tavse ord, som af krogen fór, o,de vare så forfløjne! |
私もあなたが好き 生きている限りずっと。 夏は短く 青草はしおれても 私たちの愛はまたよみがえる あなたが去年言ったことを 私は今年思い出す それはまるで窓辺にとまる小鳥のように ついばみ はばたく 少し歌い 予言をする 暖かな太陽のものでの幸運を さあ おやすみ おやすみ 私はもう夢の中 あなたの優しい目と ほろ苦いあなたの言葉 まるで片隅に閉じ込められたように ああ めまいがしそうな夢 |
スウェーデンにも素敵な作曲家はたくさんいますが、素朴そのものの歌曲を聴きたかったらやはりこの人Peterson-Berger(1867-1942)ではないでしょうか。何百年も歌い継がれてきた民謡のような歌が目白押しです。中でも「Maritの歌《という3曲からなる歌曲集は、歌詞の可愛らしさといい旋律の美しさといい、とりわけ忘れがたい印象を与えてくれます。中でも私のお気に入りは2曲目、ご覧の通りのお茶目な詩に、これ以上ピッタリくることはないだろうというような可愛い旋律とおどけたピアノ伴奏がついていて、何度聴いても笑みがこぼれます。(「おかあさんといっしょ《の歌のおねえさんが歌ったらとてもしっくりくるような、そんな歌です)それとこの人の歌曲で特筆すべきは、ピアノ伴奏の美しさでしょう。歌なしでも印象に残るようなきらめくメロディーがとても魅力的です。
でも良く読むと詩はとても深遠...
実は彼はニーチェの「ツァラトゥストラかく語りき《の一節に付けた歌曲などもあり、決して素朴一辺倒の人ではないのでした。
この歌、初めて聴いたのは北欧の現代の大御所フォン・オッターのメゾの、DGから出ているスウェーデン歌曲集で、その時から群を抜いて印象に残っているのですが、ちょっとフォン・オッターでは歌のおねえさんには風格が有りすぎて、歌の味わいが今ひとつ引き出されていないきらいがあります。
(このCDでもステンハンマルやラングストレムの曲などは絶品なのですが)
その点BIS にあるペッタション−ベリエル歌曲集のソプラノのAlinの歌は私のこの歌に求めるものを完璧に満たしてくれていて二重丸です。歌のおねえさんのちょっとコケティッシュな美声に思わずくらっと来ます。
(藤井宏行)
1998.08.09/2004.6.10改訂 (第2曲のみ)
さわやかな初夏(ことしは私の住んでいるところでは空梅雨なのかまだ乾いています)にぴったりの歌詞の第1・3曲も訳してみました。元がノルウェー語なんで誤訳は多々あると思いますが許してください。
小さい子の童謡のような第一曲、きらめくピアノが奇麗です。そしてちょぴりオトナの第三曲、悲しげなメロディなのは何故?でもやっぱりどちらも哲学的な匂いのする詩ですね。
演奏は上で挙げた2枚。第三曲目なんかはしっとりとしたフォン・オッター盤もとても素晴らしいです。
なお、作詞のビョルンソンはノーベル文学賞を取ったこともあるノルウェーの文豪なのだそうで、ノルウェー国歌も彼の作詞だといいます。
( 2005.06.15 藤井宏行 )