Letters,Riddles and Writs |
手紙 謎かけと書きもの |
I am an unusual thing (Maynard Solomon)
|
私は普通でない存在だ (ソロモン)
|
私には魂も肉体もない 私を見ることはできないが 聞くことならできる 私は自分のためだけには存在しない 人間だけが私に生命を与えることができる その者が望むならいつでも 私の人生は短いのだ なぜなら私はほとんど死んでいるからだ 生まれた瞬間に そのため 人の気まぐれによって 私は生きたり死んだりする 一日に何回も 私に命を与える者に 私は何もしない しかし その者のために私が生まれたのであれば 私は委ねよう 痛む感覚と共に わが人生の短い期間を 私がこの世を去るまでの人生を |
I am appointed to a situation (Maynard Solomon)
|
私はそんな状況にあるのだ (ソロモン)
|
十分に取れる そんな状況にあるのだ そのことを存分に楽しんでいる そして私には何かをする能力があると感じている 私がこれまでに得た吊声にふさわしい だがその代りに 私は死ななければならないのだ |
モーツァルト没後200年を記念してイギリスのBBCなどが企画した映画「手紙 謎かけと書きもの《のために書かれた音楽で、モーツァルトのハイドンセットの弦楽四重奏曲からメロディを借りていますがピアノと弦に伴奏は編曲されてまるっきりポップス調の響き。ウテ・レンパーの歌ったデッカ盤などでは歌まで含めて完全にポップスです。詞はモーツァルト自身が書いたものから取られたものの翻訳で、英語の響きが強くなるようにメロディが書かれているのもそんな風に聴こえる一因でしょう。後半のI am appointed to a situationは死の3日前のモーツァルトの言葉なのだそうで、妻コンスタンツェとヴィンセント・ノヴェロとの間で交わされた会話の中で言及されているのだそうです。
ナイマンの音楽のスタイルが強烈に出過ぎてもはやモーツァルトはどこかに行ってしまいましたが面白い曲です。
( 2017.02.18 藤井宏行 )