Nocturnes |
夜想曲 |
1 Aufblick (Richard Fedor Leopold Dehmel)
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1 仰ぎ見て (デーメル)
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eine tiefe Trauerweide. Nacht und Schatten um uns beide. Unsre Stirnen sind gesenkt. Wortlos sitzen wir im Dunkeln. Einstmals rauschte hier ein Strom, einstmals sahn wir Sterne funkeln. Ist denn Alles tot und trübe? Horch: -- ein ferner Mund -- vom Dom: Glockenchöre... Nacht ... und Liebe... |
一本の巨大な涙の柳 夜と影が私たち二人のまわりに 私たちの額は沈む 言葉なく私たちは座る 暗闇の中 かつてさざめいていた ここに小川が かつて私たちは見ていた 星たちのきらめきを みんな死に絶えてしまったのか? 聞け 遠くからの声を 教会からの 鐘の歌声だ 夜 そして愛が... |
2 Liebesode (Otto Erich Hartleben)
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2 愛の賛歌 (ハルトレーベン)
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Am offnen Fenster lauschte der Sommerwind, Und unsrer Atemzüge Frieden Trug er hinaus in die helle Mondnacht. - Und aus dem Garten tastete zagend sich Ein Rosenduft an unserer Liebe Bett Und gab uns wundervolle Träume, Träume des Rausches - so reich an Sehnsucht! |
開けた窓から夏の風が聞き耳を立て そして私たちの吐息を解き放ち 明るい月夜へと運び去っていったのです そして庭からはおずおずと香ってくるのです バラの香りが私たちの愛のベッドのところまで そして私たちにすてきな夢をくれました 陶酔に満ちた夢を、憧れでいっぱいの! |
バックスにしては珍しいドイツ語の詩につけた歌ですが、若い頃彼は結構な数のドイツ語歌曲を書いていたようです。この2曲はオーケストラ編曲されて「夜想曲《として残されておりますが、まるでツェムリンスキーか初期のシェーンベルクといった感じの濃密な響きに驚かされます。面白いことにここで取り上げられたデーメルの詩には若きウェーベルンの、そしてハルトレーベンの詩には若きベルクのつけた曲があり、それとの聴き比べができるのです。私の耳ではこのバックスの曲の方が後期ロマン派の爛熟しつくした味わいがずっと色濃く出ているように思えて面白く聴けました。
( 2016.09.23 藤井宏行 )