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2 Shakespeare Sonnets   Op.31
2つのシェイクスピアのソネット

詩: シェイクスピア (William Shakespeare,1564-1616) イングランド

曲: ホヴァネス (Alan Hovhaness,1911-2000) アメリカ 英語


1 When,in disgrace with Fortune and men's eyes
1 たとえ幸運や人々の眼差しから見放され

When,in disgrace with Fortune and men's eyes,
I all alone beweep my outcast state,
And trouble deaf heaven with my bootless cries,
And looke vpon my selfe and curse my fate.
Wishing me like to one more rich in hope,
Featur'd like him,like him with friends posess'd,
Desiring this man's art and that man's scope,
With what I most enjoy contented least;
Yet in these thoughts myself almost deprising
Haply I think on thee,and then my state,
Like to the lark at break of day arising
From sullen earth,sings hymns at heaven's gate:
 For thy sweet love rememb'red such wealth brings
 That then I scorn to change my state with kings.

たとえ幸運や人々の眼差しから見放され
私がただ独り嘆くことになっても 自分の見捨てられた境遇を
そして悩ますことになっても 聞く耳持たぬ天を私の無益な叫びで
自らの境遇を省み 自らの運命を呪うことになっても
自分がそうありたいと願いながら 希望に一層溢れている人のように
あの人のように容姿端麗に あの人のように友に恵まれ
手に入れたいと願っても この人の技能を あの人の見識をと
そんなことはほとんど満たされることはないのだ
だがそんなことを考えて自らを貶めていても
ふとあなたのことを思うと 私の状態は
まるでヒバリが夜明けに飛び上がるようになるのだ
暗い大地から 賛歌を歌いつつ天国の門へと
 なぜならあなたの優しい愛情は素晴らしい富を運んでくれることを思い出させ
 この境遇を王様とさえ取り換えることを私は軽蔑してしまうからなのだ


2 When to the sessions of sweet silent thought
2 甘く沈黙した思いの法廷に

When to the sessions of sweet silent thought,
I summon up remembrance of things past,
I sigh the lack of many a thing I sought,
And with old woes new wail my dear time's waste:
Then can I drown an eye (unused to flow)
For precious friends hid in death's dateless night,
And weep afresh love's long since cancelled woe,
And moan th' expense of many a vanished sight.
Then can I grieve at grievances foregone,
And heavily from woe to woe tell o'er
The sad account of fore-bemoaned moan,
Which I new pay as if not paid before.
 But if the while I think on thee (dear friend)
 All losses are restored, and sorrows end.

甘く沈黙した思いの法廷に
私は召喚するのだ、過ぎ去ったことの思い出を
私は嘆息する 探し求めた多くが失われていることに
そして昔の嘆きを新たに嘆く 大切な時間を無駄にしてしまったと:
こうして私は目を涙で濡らすことができるのだ(流したことなどなかったのに)
大切な友人たちが死の限りない夜の中に隠れたことに
そして改めて泣くのだ 愛のとっくに清算したはずの悲しみに
それから悼むのだ 多くの去っていった姿の喪失感に
こんな風に私は悲しむことができる 過ぎ去った悲しみを
そして重苦しく嘆きまた嘆きを数え上げ
既に嘆き終えたはずの悲しみの勘定を
まるで前に支払われていないかのように新たに払い直すのだ
 だがしかし そんな時あなたを思うと(いとしいひとよ)
 すべての搊失が回復され 悲しみは終わるのだ



アメリカの作曲家ですが、彼のルーツである中央アジア(アルメニア)にインスパイアされた独特の音楽を書いていたこの人にシェイクスピアの詩になる作品があったとは驚きです。しかも劇音楽ではなくソネットというのがなかなかに渋い。この2篇はソネットの29番と30番の続き番号。いずれも12行のしつこいまでに繰り返される悲しみが最後の2行でどんでん返しされるというスタイル。ホヴァネスの音楽はルネッサンス期の宗教音楽のようなシンプルなメロディですが味わい深くしみじみと聴かせてくれます。

( 2016.01.05 藤井宏行 )