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童謡百曲集 第3巻 続き  


詩: 野口雨情 (Noguchi Ujyou,1882-1945) 日本

曲: 山田耕筰 (Yamada Kousaku,1886-1965) 日本 日本語


51 河原鶸(かわらひわ)


河原鶸 ビーン
     朝から ビーン

ビン ビン
     ビーン

糸ひく ビーン
     より糸 ビーン

ビン ビン
     ビーン

お天気 見てゐちゃ
     糸ひく ビーン


52 箱根の山


箱根のお山で 
狐が啼いた

とんがり口して 
コーンと啼いた

とんがり口して 
コーンと啼いた

懸巣が真似して 
コーンと啼いた

ほんとの狐と 
狐が思つた

とんがり口して 
コーンと啼いた


53 鼠の小母さん


いまここ鼠が 
ちよつと通つた

鼠の小母さん 
蝙蝠さん

いまここ鼠が 
ちよつと通つた

鼠の小母さん 
蝙蝠さん

御門(ごもん)の扉を 
見やしやんせ

お月さんがちよつと出て
ちよつと射した

月夜になつたら 
蝙蝠さん

鼠もちよつと呼んで
ちよつと遊ぼ


54 海坊主小坊主


カンカラカンカラカン
海坊主 出たぞ

小坊主の先に
海坊主 出たぞ

カンカラカンカラカン
海坊主 小坊主  

小坊主も出たぞ 
カンカラカンカラカン


55 かくれんぼ


下駄に火がつく 
かくれんぼ出て来(こ)

出て来 かくれんぼ 
鼻緒が燃える

下駄に火がつく 
鬼さん留守だ

出て来 かくれんぼ 
かくれんぼ出て来


56 雲雀の水汲み


雲雀の水汲み 
お日さま高いぞ

さつさと 
水汲め

水なし畑に 
畑がなるまで

さつさと 
水汲め

お日さま高いぞ
お日さま高いぞ 

さつさと 
水汲め

水なし畑に 
畑がなるまで

さつさと 
水汲め


57 子鳩の歌


山は晴れたぞ 
野に寝た 子鳩

帰れ 子鳩よ 
もどれよ 山へ

はぐれ子鳩に 
なるから 帰れ

野には 野狐 
畑にや鼬(いたち)

鼬ア啼いたぞ 
戻れよ 子鳩

狐ア来るから 
帰れよ 子鳩


58 兎のダンス


ソソラ ソラ ソラ兎のダンス
タラッタ ラッタ ラッタ
ラッタ ラッタ ラッタ ラ

脚で蹴り蹴り 
ピョツコ ピョツコ 踊る
耳に鉢巻 ラッタ ラッタ ラッタ ラ

ソソラ ソラ ソラ可愛いダンス
タラッタ ラッタ ラッタ
ラッタ ラッタ ラッタ ラ

とんで跳ね跳ね 
ピョッコ ピョッコ 踊る
脚に赤靴 ラッタ ラッタ ラッタ ラ


59 榧の實


烏(からす)ア 畑で 
榧(かや)の實  拾ろた

たんこ たんこ たんこ
たんころたん と たたく

烏ア 榧の實 
たんころたん と たたく

たたけ たんこ たんこ
たんころたん と たたけ

烏ア 榧の實 
畑で 拾ろた


60 赤とんぼ


つんつん 飛んでる 
赤とんぼ
金魚屋の 金魚は 
何してた

みんなで並んで 
水呑んでた

つんつん 飛んでる 
赤とんぼ
鳥屋(とつとや)の 鶏(とつと)は 
何してた

みんなで並んで 
ねんねしてた



雨情の童謡詩で面白いのは擬音の使い方ですね。海坊主の登場に「カンカラカンカン」なんて使うのはなかなかない発想だと思います。この曲かなり変な音楽のように思うのですが、とらえどころのなさが逆に魅力だからでしょうか。雨情-耕筰の作品としては比較的良く取り上げられます。他にこの第3巻の雨情の10曲で興味深いのは、マーラーの歌曲のような諧謔味が面白い「鼠の小母さん」、中山晋平の景気の良い歌に比べるとちょっと品の良い「兎のダンス」、露風の詩による有名な「赤とんぼ」とはまったく違う飄々とした雨情の「赤とんぼ」と言ったところでしょうか。

( 2015.10.31 藤井宏行 )