風に乗せてうたへる春のうた |
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1 青き臥床をわれ飾る
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春の戀ぐさ種々(くさぐさ)の花をつくして また君がため白地なす 祝(ほが)ひの風の素絹(すぎぬ)もて 熱き日光を避(よ)けまつらむ |
2 君がため織る綾錦
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春の被衣(かつぎ)の戀ごろも 眞昼となれば妙(たえ)に投ぐ あはれ床しき風の梭(おさ) |
3 光に顫ひ 日に舞へる
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汝(な)が吹く笛の調べこそ 戀するものの心にか 熱き涙とあこがれと 風はさあらぬ 節まはし |
4 たたへよ、しらべよ、歌ひつれよ
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春ぞ来ぬると風の群 たたへよ、しらべよ、歌ひつれよ げににぎはへる戀幸を まことの幸を |
三木露風がまだ17歳の1906に書いた「風に乗せてうたへる春のうた八章」の中の3〜6章を取り出して一連の歌曲集としています。あまり山田耕筰の作品っぽくない陶酔感あふれるフランス歌曲ばりの流麗なメロディは非常に印象的で、春の訪れと、そして熱き恋のときめきをしみじみと噛みしめる幸福感一杯の音楽が聴けます。のちに若き友人の演出家土方与志の結婚に際し祝婚歌として贈呈したのだそうですが、それも頷けるような魅惑の調べです。
( 2015.03.22 藤井宏行 )