5 Gesänge |
5つの歌 |
1 Hymne (Novalis)
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1 賛歌 (ノヴァーリス)
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Das Geheimnis der Liebe, Fühlen Unersättlichkeit Und ewigen Durst. Des Abendmahls Göttliche Bedeutung Ist den irdischen Sinnen Rätsel; Aber wer jemals Von heißen,geliebten Lippen Atem des Lebens sog, Wem heilige Glut In zitternden Wellen das Herz schmolz, Wem das Auge aufging, Daß er des Himmels Unergründliche Tiefe maß, Wird essen von seinem Leibe Und trinken von seinem Blute Ewiglich. Wer hat des irdischen Leibes Hohen Sinn erraten? Wer kann sagen, Daß er das Blut versteht? Einst ist alles Leib, Ein Leib, In himmlischem Blute Schwimmt das selige Paar. -- O! daß das Weltmeer Schon errötete, Und in duftiges Fleisch Aufquölle der Fels! Nie endet das süße Mahl, Nie sättigt die Liebe sich; Nicht innig,nicht eigen genug Kann sie haben den Geliebten. Von immer zärteren Lippen Verwandelt wird das Genossene Inniglicher und näher. Heißere Wollust Durchbebt die Seele, Durstiger und hungriger Wird das Herz: Und so währet der Liebe Genuß Von Ewigkeit zu Ewigkeit. |
愛の神秘を そして感じぬ 貪欲さや 永遠の渇望を あの最後の晩餐の 神聖な意味は 地上の者の頭には上可解である だが誰でも 熱い愛のくちびるから 生命の吐息を受け取った者 聖なる炎が 震える波の中でその心を溶かした者は その目を開き 天の 計り知れない深さを知った者は あの御方のお体を食し そしてあの御方の血を飲むのだ 永遠に 誰がこの地上の生活の 気高い意味を計り知ることができよう? 誰が言うことができよう その血のことが分かるなどと? いつかはすべての肉体が ひとつの肉体となり 天上の血の中を 至福のペアが泳ぐのだ おお!この世の海が 赤く燃え上がり 香り立つ肉体の中に 岩がせり上がればいい! 決して甘美な食事が終わることはなく 決して愛が満たされることもない 内面にも入り得ず 決して十分には 愛がどれほど自らを愛せようとも より一層やさしい唇よりの 喜ばしきものは変化して より一層親しく緊密なものになるのだ もっと熱い喜びが 魂をうち震わせて 一層の飢えと渇くのだ この胸は こうして愛の喜びは続く 永遠から永遠へと |
2 Ekstase (Otto Julius Bierbaum)
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2 エクスタシー (ビーアバウム)
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und deine Wunder liegen vor mir da Wie Maienwiesen,drauf die Sonne scheint. Du bist die Sonne,Gott,ich bin bei dir, Ich seh mich selber in den Himmel gehn. Es braust das Licht in mir wie ein Choral. Da breit' ich Wandrer meine Arme aus und in das Licht verweh ich wie die Nacht, die in die Morgenrötenblust vergeht. |
そして御身の軌跡をわが前に横たえる まるで五月の牧場のように その上で太陽が輝く 御身こそが太陽なのだ 神よ われは御身と共にある われは見ん 自身が天へと昇って行くのを 光が共鳴する われの内で ひとつのコーラスのように そこでわれはさまよう 放浪者は腕を広げて そして光の中に溶け込んで行くのだ 夜のように 朝の真っ赤な曙の中に消えてゆく夜の |
3 Der Erkennende (Franz Werfel)
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3 知る人 (ヴェルフェル)
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Stehn sie auf vom Tisch,um uns zu weinen. Doch wir sitzen übers Tuch gebückt Und sind kalt und können sie verneinen. Was uns liebt,wie stoßen wir es fort Und uns Kalte kann kein Gram erweichen. Was wir lieben,das entrafft ein Ort [Wort], Es wird hart und nicht mehr zu erreichen. Und das Wort,das waltet,heißt: Allein, Wenn wir machtlos zu einander brennen. Eines weiß ich: nie und nichts wird mein. Mein Besitz allein,das zu erkennen. |
テーブルから立ち上がる われらを思って泣くために だがわれらはテーブルクロスの上にうずくまって座るだけだ そして冷たく 彼らを拒絶している われらを愛する者が誰であろうと われらはそれを押しのけ その冷たさは われらの悲しみを和らげることはない われらが愛する者は誰であろうと ひとところから散り散りとなって かたくなになり もはや近寄り難いものとなるのだ そしてひとつの言葉 それを表すのは 唯一ということ われらが力なく 互いを傷つけあった時 私は一つのことを知っている:何も自分のものになったことはないと 私の持ち物はただひとつ それを知っているということだけだ |
4 Lobgesang (Richard Fedor Leopold Dehmel)
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4 賛美の歌 (デーメル)
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Unerschöpflich,unergründlich,unermeßlich: Woge zu Woge stürzend gehoben, Woge von Woge wachsend verschlungen, Sturm- und wettergewaltig nun, Sonneselig nun,willig nun dem Mond Die unaufhaltsame Fläche, Doch in der Tiefe stetes wirken Ewige Ruhe,ungestört, Unentwirrbar dem irdischen Blick, Starr verdämmernd in gläsernes Dunkel Und in der Weite stetes Schweben Ewiger Regung,ungestillt, Unabsehbar dem irdischen Blick, Mild verschwimmend im Licht der Lüfte; Aufklang der Unendlichkeit Ist das Meer,ist die Liebe. |
尽きることなく 底知れず 計り知れない 波また波と せり上がりそして沈み込み 波は波を飲み込んで膨れ上がる 嵐や激しい天候となることもあれば 太陽に祝福されたりもし 嬉々として時には月を 映し出す鏡面にもなる だが その深い底には常にあるのだ 永遠の休息が 邪魔されることなく 地上のまなざしに晒されることなく じっと動かずにいる ガラスの暗闇の中 そしてその広がりの中 常に漂っているのだ 永遠の情動が 静められることなく 地上のまなざしに見極められることもなく 穏やかに溶けて行きながら 空の光の中で 無限のざわめき それが海であり それが愛なのだ |
5 Hymne an die Nacht (Novalis)
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5 夜の賛歌 (ノヴァーリス)
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Und jede Pein Wird einst ein Stachel Der Wollust sein. Noch wenig Zeiten, So bin ich los, Und liege trunken Der Lieb' im Schoß. Unendliches Leben Wogt mächtig in mir; Ich schaue von oben Herunter nach dir. An jenem Hügel Verlischt dein Glanz -- Ein Schatten bringet Den kühlenden Kranz. O! sauge,Geliebter, Gewaltig mich an, Daß ich entschlummern Und lieben kann. Ich fühle des Todes Verjüngende Flut, Zu Balsam und Äther Verwandelt mein Blut - Ich lebe [bei]1 Tage [Voll]2 Glauben und Mut, Und sterbe die Nächte In heiliger Glut. |
すべての苦しみは いつか一本の棘となるだろう 快楽をもたらす棘に あとほんの僅かな時がたてば 私は解放されて 酔いしれて横たわるだろう 愛の懐に 限りない生命が 力強く湧き上がる 私の中で 私は彼方より見つめる 御身の方を見おろすように あの丘のそばで 御身の光は消えて ひとつの影がもたらす つめたい花輪を おお引き寄せよ 愛する者よ 力強く私を 私が眠りに落ち 愛することができるように! 私は死の 若返りの潮を感じ バルサムやエーテルへと 私の血は変化する 私は昼間に生きる 信仰と勇気に満たされて そして夜に死ぬのだ 神聖な熱情の中に |
1924年出版の5つの歌曲からなる歌曲集は、前の2つに比べてちょっと変わっております。それまでは主として19世紀末の詩人を選んでいた彼女が19世紀初頭に活躍したベートーヴェンとほぼ同年代の詩人ノヴァリースの詩につけた曲が2曲もあることが一番大きいでしょうか(この両曲ともシューベルトがメロディをつけた曲があります)。さらにデーメルとビーアバウムの詩につけたものが1曲ずつあるのはお約束で驚くには値しませんけれども、興味深いのは第3曲、フランツ・ヴェルフルの詩を選んでいるところです。
1911年に夫グスタフ・マーラーを亡くした彼女ですが、その後すぐに画家のココシュカと恋愛関係となり、その破局後の1920年には建築家のワルター・グロビウスと結婚します。が、ちょうどそのころにこのヴェルフルと恋に落ち、ついには夫グロビウスを捨てて彼のもとに走ったのでした。1929年に彼と結婚したのちは1945年の彼の死まで結婚生活は続きます。この曲は1915年ごろの作曲と言われておりますのでまだヴェルフルと出会う前、いくつかの解説によれば彼女がヴェルフルの詩に初めて触れたのがこれだとされ、心が震えるほどの感動を覚えたとあります。私から見ると小難しくてあまりピンとこない詩のように思えたのですが、やはり恋に落ちる人は違いますね。
全体として以前の2つの歌曲集よりも古典的な佇まいで聴きやすいですが、逆にアルマの音楽の個性が打ち消されて平凡な音楽になってしまったようにも感じられます。そんなわけでか他の二つの歌曲集よりも取り上げられることは圧倒的に少なくなってしまっているようです。
( 2014.12.14 藤井宏行 )