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4 Lieder  
4つのリート

曲: マーラー,アルマ (Alma Mahler,1879-1964) オーストリア ドイツ語


1 Licht in der Nacht (Otto Julius Bierbaum)
1 夜の光 (ビーアバウム)

Ringsum dunkle Nacht,hüllt in Schwarz mich ein,
zage flimmert gelb fern her ein Stern!
Ist mir wie ein Trost,eine Stimme still,
die dein Herz aufruft,das verzagen will.

Kleines gelbes Licht,bist mir wie der Stern
überm Hause einst Jesu Christ,des Herrn
und da löscht es aus. Und die Nacht wird schwer!
Schlafe Herz. Schlafe Herz. Du hörst keine Stimme mehr.

あたりは暗い夜 黒衣に私は包まれている
おずおずと黄色くちらつく 遠くで星がひとつ!
私に向かって 慰めのように 声が静かに呼びかける
それは落胆してきたお前の心に呼びかける声

小さな黄色い光よ 私にとってお前はまるで星のようだ
かつて主イエス·キリストの家の上に輝いていた
だがそれは突然消えた そして夜が重たくなる!
眠れ心よ 眠れ心よ もはや声ひとつ聞くことはできぬのだから!

2 Waldseligkeit (Richard Fedor Leopold Dehmel)
2 森のしあわせ (デーメル)

Der Wald beginnt zu rauschen,
Den Bäumen naht die Nacht,
Als ob sie selig lauschen,
Berühren sie sich sacht.

Und unter ihren Zweigen,
Da bin ich ganz allein,
Da bin ich ganz dein eigen :
Ganz nur Dein!

森はざわめき始めた
木々に夜が近づいてきたのだ
まるで幸せいっぱいに耳を傾けているように
木々はやさしくお互いに触れ合っている

そして木々の枝の下
そこに私はただひとり
そこで私は私自身のもの
完全にあなただけのもの!

3 Ansturm (Richard Fedor Leopold Dehmel)
3 激情 (デーメル)

O zürne nicht,wenn mein Begehren
Dunkel aus seinen Grenzen bricht,
Soll es uns selber nicht verzehren,
Muß es heraus ans Licht!

Fühlst ja,wie all mein Innres brandet,
Und wenn herauf der Aufruhr bricht,
Jäh über deinen Frieden strandet,
Dann bebst du aber du zürnst mir nicht.

おお怒らないで もしも私の願望が
暗くその枠を破って出て来たとしても
それが私たちを貪らないように
光に当ててやる必要があるの!

だから感じて 私の中にある激情を
そしてその情動が突き上げてきて
突然あなたの安らぎをかき乱した時には
あなたは震えてね だけど私を怒らないで

4 Erntelied (Gustav Falke)
4 刈り入れの歌 (ファルケ)

Der ganze Himmel glüht
In hellen Morgenrosen;
Mit einem letzten,losen
Traum noch im Gemüt,
Trinken meine Augen diesen Schein.
Wach und wacher,wie Genesungswein,
Und nun kommt von jenen Rosenhügeln
Glanz des Tags und Wehn von seinen Flügeln,
Kommt er selbst. Und alter Liebe voll,
Daß ich ganz an ihm genesen soll,
Gram der Nacht und was sich sonst verlor,
Ruft er mich an seine Brust empor.
Und die Wälder und die Felder klingen,
Und die Gärten heben an zu singen.
Fern und dumpf rauscht das erwachte Meer.
Segel seh' ich in die Sonnenweiten,
Weiße Segel,frischen Windes,gleiten,
Stille,goldne Wolken obenher.
Und im Blauen,sind es Wanderflüge?
Schweig o Seele! Hast du kein Genüge?
Sieh,ein Königreich hat dir der Tag verliehn.
Auf! Dein Wirken preise ihn!

空全体が輝いている
明るい朝のバラ色に
最後のひとつのぼんやりした
夢がまだ心のうちにはあるが
わが目は飲み干すのだ この光を
段々はっきりと目覚めてくる 気付けのワインのように
そして今 バラの丘からやってくる
昼の輝きが その翼の羽ばたきが
それは自らやってくるのだ 昔の愛に満ちて
そして私をすっかり回復させるのだ
夜の悲しみや 他の失われたかも知れないものから
それはその胸に私を再び抱く
森や野原は鳴り響き
そして庭は歌い始める
遠くでくぐもった唸り 目覚めた海の
帆が見える 太陽輝く彼方に
白い帆が 新鮮な風を受けて滑って行くのだ
静かな 黄金の雲は上に
そして青さの中 あれは渡り鳥たちだろうか?
沈黙せよ おお魂よ!そなたは満ち足りてはおらぬのか?
見よ 昼間がそなたに授けた王国を
さあ!そなたの行いで昼を讃えるのだ!


夫グスタフの承認を得て再び作曲を始めたアルマ、グスタフの死後ですが1915年に出版された4つの歌曲ではこの時期に作曲された曲とまだ独身時代の1900年頃に書いた曲とを組み合わせているのだそうです。どれが結婚時代の作品かは調べきれませんでしたが、曲想も曲の規模も明らかに他と違う第4曲は結婚時代のもののように私は聴いていて思いました。ちなみにこの第4曲の詩、ファルケの原題はGesang am Morgen(朝に歌う)となっており、内容的にも収穫とは何の関連もないのでアルマか関係者誰かの勘違いでついたタイトルのように思えます。

さて、曲についてですが、第1曲目はいかにもアルマが好きそうな詩、幻想的な冒頭と中間部の盛り上がり、そして静かに消えて行く終結と、新ウィーン楽派の最良の歌曲にも比するほどの出来栄えと私は思います。第2曲はシュトラウスやレーガー、マルクスなども曲をつけている詩ですが、アルマの曲も独特の浮遊感が魅力的で聴きごたえ十分です。第3曲はとことんロマンティックなメロディで印象に残ります。この詩には彼女の師匠でもあるツェムリンスキーがつけた歌曲もあります。
最後の曲は端正な歌で、他の3曲の世紀末的な濃密さと一線を画しておりますが、ピアノ伴奏の分厚い響きなどはやはりこの時代の歌だなあという感を強くします。

( 2014.12.06 藤井宏行 )