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詩: 石川啄木 (Ishikawa Takuboku,1886-1913) 日本
曲: 高田三郎 (Takata Saburou,1931-2000) 日本 日本語
やわらかに柳あおめる北上の 岸辺目に見ゆ泣けとごとくに
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頬につとうなみだのごわず一握の 砂を示しし人を忘れず
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いのちなき砂のかなしさよさらさらと 握れば指のあいだより落つ
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病のごと思郷のここと湧く日なり 目にあおぞらの煙かなしも
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不来方(こずかた)のお城の草に寝転びて 空に吸われし十五の心
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ふるさとを出でて五年(いつとせ)病をえて かの閑古鳥を夢にきけるかな
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はずれまで一度ゆきたしと思いいし かの病院の長廊下かな
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あめつちにわが悲しみと月光と あまねき秋の夜となれりけり
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清瀬保二、越谷達之助の他にも啄木の短歌に歌を付けた人はたくさんいますが、私の聴いたことのある中では、この高田三郎作品もまた魅力的で印象に残ります。
ハープのようなアルペジオと共にひそやかに歌われる「やわらかに」。詩は2回繰り返されます。
モノローグのように訥々と歌う「頬につとう」、これは繰り返しなしであっさり終わりますが、私にとっては一番印象的な作品でした。
「いのちなき」は非常に美しいメロディで浸り込むように詩は2回繰り返しありです。
感傷的な「病のごと」(繰り返しあり)
「空に吸われし」のところでのリタルダンドが効果的な子守歌のようなリズムの「不来方の」
淡々と歌う「ふるさとを」(これは繰り返しなし)
前奏は明るいのですが、歌はどんどん悲しくなっていく「はずれまで」(繰り返しなし)
そして最後を締める堂々とした「あめつちに」(繰り返しあり)
高田三郎といえば合唱曲が有名で、おそらくこの曲も合唱にも編曲(あるいは合唱がオリジナル?)されていてこちらの方を耳にする機会の方が多いかも知れませんが、私は啄木のこの心象風景を表すには独唱のスタイルの方がしっくり来ているように思います。
録音はなかなかお目にかかれませんが、比較的入手が容易と思われるのは東敦子さんの日本歌曲集2、あるいはバスの堀野浩史さんの日本歌曲集「ふるさとの」など。
啄木の世界にしては少々華麗に過ぎるような気もしないではないですが、やはりその美しい音楽には敬意を表してご紹介しておきたいと思います。ぜひ御一聴を。
( 2004.01.01 藤井宏行 )