Die Tageszeiten Op.76 TrV 256 |
日々のうつろい |
1 Der Morgen
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1 朝
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Putzt der Mond die Lampe aus, Und die Stern ziehen von der Wache, Gott behüte Land und Haus! Fliegt der erste Morgenstrahl Durch das stille Nebeltal, Rauscht erwachend Wald und Hügel: Wer da fliegen kann,nimmt Flügel! Und sein Hütlein in die Luft Wirft der Mensch vor Lust und ruft: Hat Gesang doch auch noch Schwingen, Nun,so will ich fröhlich singen! hinaus,o Mensch,weit in die Welt, Bangt dir das Herz in krankem Mut; Nichts ist so trüb in Nacht gestellt, Der Morgen leicht macht's wieder gut. |
月がそのランプを消して 星たちが見張り場から去って行くときに 神よ守りたまえ 国を 家を 最初の朝の光が射す 静かな霧の谷間を突き抜けて 目覚めざわめく 森や丘は 飛ぶことのできる者よ 翼を広げよ そして自らの帽子を空へと 放り上げて人は喜びのあまり叫ぶのだ 歌もまた翼を持つのならば 今こそ私も陽気に歌おう と 外に出ろ 人間よ 広いこの世界に お前の心が不安であろうとも 病んだ勇気のうちに 何も悲しくはない 夜に生み出されたものなど 朝は軽やかに それをまた善きものに変えるのだから |
2 Mittagsruh
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2 真昼の憩い
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Stiller Lust und tiefen Qualen Webet heimlich,schillert,Strahlen! Sinnend ruht des Tags Gewühle In der dunkelblauen Schwüle, Und die ewigen Gefühle, Was dir selber unbewußt, Treten heimlich,groß und leise Aus der Wirrung fester Gleise, Aus der unbewachten Brust, In die stillen,weiten Kreise. |
静かな喜びを 深い悲しみを ひそやかに織りなす きらめく光! 思いつつ安らぐ 昼間の喧騒 暗青色の熱気の中で そしてあの永遠の感情が お前自身にも気づかれぬものが ひそやかにやってくるのだ 巨大で静かなものが しっかりとした足取りの軌跡から まだ見張られてはいない胸から この静かな 広い輪の中へと |
3 Der Abend
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3 夕暮れ
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Rauscht die Erde wie in Träumen wunderbar mit allen Bäumen, was dem Herzen kaum bewußt, alte Zeiten,linde Trauer, und es schweifen leise Schauer wetterleuchtend durch die Brust. |
大地はざわめく 夢の中のように 不思議にも すべての木々と共に 心がほとんど気づかぬこと 古い日々 ひそやかな悲しみ そしてひそやかなおののきがさまよう 稲光をちらつかせながら 胸の中で |
4 Die Nacht
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4 夜
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Die Nacht im stillen Wald, Wenn in den dunklen Bäumen Das alte Märchen hallt. Die Berg' im Mondesschimmer Wie in Gedanken stehn, Und durch verworrne Trümmer Die Quellen klagend gehn. Denn müd ging auf den Matten Die Schönheit nun zur Ruh, Es deckt mit kühlen Schatten Die Nacht das Liebchen zu. Das ist das irre Klagen In stiller Waldespracht, Die Nachtigallen schlagen Von ihr die ganze Nacht. Die Stern' gehn auf und nieder - Wann kommst du,Morgenwind, Und hebst die Schatten wieder Von dem verträumten Kind? Schon rührt sich's in den Bäumen, Die Lerche weckt sie bald - So will ich treu verträumen Die Nacht im stillen Wald. |
この夜を 静かな森の中の 暗い木々の間に 古いメルヘンがこだまする時 山が月明かりの中 まるで想いのうちのようにそびえ そして崩れた廃墟を抜けて 泉が嘆きつつ流れ出ている なぜなら疲れて去って行ったのだ 牧場の上を 美しきものが 今 安らごうと 冷たい影で隠している 夜が 恋人の姿を それは間違った嘆きだ この静かな森の壮麗さの中では ナイチンゲールが歌っている 彼女のことを 一晩中 星たちは昇って行き そして沈む いつ来るのだお前は 朝の風よ そして影を再び取り去ってくれるのか 夢見ているあの子から? すでに揺れ動いている 木々の間で ヒバリがすぐに木々を目覚めさせるのだ ならば私も忠実に夢を見よう この夜を 静かな森の中の |
シュトラウスでは珍しい、管弦楽伴奏つきの男声合唱曲です。ウィーンのとある男声合唱団から委嘱を受けて1927年に作曲されたもので、詩は彼にしては珍しいアイヒェンドルフのもの、詩集「さすらいの歌」から取られていて、ちょうど朝・真昼・夕暮れ・夜の一日のうちの情景が一曲ずつ取り上げられています。一曲目の最初の4行は別の詩だったのですが、シュトラウスがくっつけてひとつの曲にしています。詩集の中でももともとこの順番に並んでいたこともあり違和感はありません。「バラの騎士」を思わせる絢爛豪華な管弦楽伴奏に乗せてとても力強く歌われていきます。
第2曲は逆にとても静かな曲、焼け付くような暑さの中でのまどろみでしょうか。朦朧とした雰囲気の中静かに曲を閉じます。第3曲目も静かな曲ではあるのですが、夕立の嵐を前にしたような不穏な静けさです。最後の曲はアイヒェンドルフお得意の夜の描写をシュトラウスも濃密な音楽で紡ぎ出して、実に印象的な歌にしています。ミシェル・プラッソンがベルリンのエルンスト・ゼンフ合唱団およびドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団を率いて入れた録音(EMI)がほとんど唯一のもののように思われますが、録音があるだけでも良しとしなければならないでしょうか。それほどシュトラウスの合唱作品はネグレクトされているということなのです。
( 2014.08.02 藤井宏行 )