Des Hafis Liebeslieder Op.24 |
ハーフィズの愛の歌 |
1 Wünsche
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1 願い
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und du,die Sonne,die sich darin spiegelt. Ich wollt,ich wär ein Quell im Wiesengrunde und du die Blume,die sich darin anlacht. Ich wollt,ich wär ein grüner Dorn am Busche und du die Rose,die ihn rot umschimmert. Ich wollt,ich wär ein kleines Korn im Sande und du der Vogel,der es schnell auf pickt! |
輝く太陽のようなあなたを写したい 私は草原に湧く泉になって 草原に咲く花のようなあなたに微笑みかけたい 私は茂みの枝の棘となって バラの花のようなあなたを赤く輝かせたい 私は砂の中に散っている種になって 小鳥のようなあなたについばんでもらいたい |
2 Die einzige Arzenei
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2 ただひとつの妙薬
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Mir kann der beste nicht der Ärzte helfen. Es gibt kein Mittel gegen diese Wunden, die so verheerend glühn in meiner Brust. Nur Eine kann mir helfen,jene Eine die mir das süße Gift gab,dran ich kranke. Daß sie mich liebte! Ich wäre gleich gesund. |
どんな名医でも治せはしない この傷を癒す薬はどこにもない 私の胸をこんなにも焦がすこの傷を ただひとつ、私を癒してくれるもの それはあなたが僕を愛してくれること そうすればすぐに元気になるだろう |
3 Die brennenden Tulpen
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3 燃えさかるチューリップ
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werden ungezählte rote Tulpen, rote Tulpen flammen sprießen. Staune nicht ob dieses Wunders, sondern,Herliche,bedenke,bedenke, welche ungeheure Gluten, dir geweihte Liebesgluten, in dem Lebenden einst brannten, da der Tote noch so glüht. |
真っ赤なチューリップが咲くだろう 燃えるように赤いチューリップが これは奇跡でも何でもない 火の神ハーキュリーズよ、考えてもみてくれ その恐ろしい火の輝きを 君が起こした いとおしい輝きは 生きている人を焼き焦がす だから死んだあともこのように燃えているのだ |
4 Tanz
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4 踊り
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Göttlich ist Tanz! Göttlich,göttlich ist Tanz! Manche tanzen in Strümpfen, manche im Schuhen nur,manche nackt! Hoch! Hoch,ihr nackten Tänzerinnen,hoch! Ihr Schönsten und Kühnsten! Heute tanzt alles,alles,alles tanzt! Göttlich ist Tanz! Göttlich ist Tanz! |
女神たちよ踊れ!女神たちよ、女神たちよ踊れ! 幾人かは靴を履いて踊り、 幾人かは裸足で踊る そら、そら、裸足のダンサーよ踊れ! 一番美しい踊り手も、一番大胆な踊り手も さあ、踊れ、皆で、踊れ! 女神たちよ踊れ!女神たちよ踊れ! |
5 Der verliebte Ostwind
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5 恋に落ちた東風
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Wer gibt mir Nachricht von meiner Liebsten? Zwar der Ostwind kam und raunte hastig Botschaft mir ins Ohr, doch raunte er so stammelnd und verwirrt, daß ich ihn nicht verstand! Ich weiß es wohl,ich weiß es wohl, Er selber ist der Ärmste, ganz betrunken und geisteswirr durch meiner Liebsten Schönheit, meiner Liebsten Schönheit. |
誰がいとしい人の便りを届けてくれるのだろう? 東風が吹き、耳に何かをささやきかけたが、 おずおずと、そしてどぎまぎとしたささやきだったので 何と言ったのかは分からなかった! でも私は知っている、私は知っている 東風はかわいそうなやつだ。 完全に酔いしれ、心奪われているのだろう。 私の恋人の美しさに、 私の恋人の美しさに。 |
6 Trauriger Frühling
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6 さびしい春
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Hyazinten und Tulpen und Narzissen steigen lachend aus allen Beeten auf. Doch wo bleibst du? Wo bleibst du? Die Erde hält dich fest in ihrem Dunkel. Ich werde weinen gleich der Frühlingswolke, vielleicht daß du dann doch aus deiner Tiefe emporsteigst,als des Lenzes schönste Blume! |
ヒヤシンスが、チューリップが、スイセンが 畝の中から微笑みかけてくる だが、あなたはどこにいるのか?どこにいるのか? 大地はあなたをまだ、土の底で眠らせている。 私は春の雲と同じように涙の雨を降らすだろう そうすれば、もしかするとあなたは土の底から芽を出し、 春の一番美しい花として光り輝くのかも知れないから |
大地の歌の詩(李白・杜甫の詩の独訳)、そして日本の和歌の独訳でも著名なベートゲは、他にもアラビアやインドなどの詩をもとにオリエンタリズム溢れる訳詩集を作っています。
その中にひとつ、14世紀ペルシャの詩人、ハーフィスの詩に基づく作品がありますが、ここには気恥ずかしくなるくらい率直な愛する気持ちの吐露がみなぎっています。今のイランでも人気の高いこの詩人の作品は、古今東西変わらない人間に関する鋭い洞察に満ち溢れているということでしょうか?
この詩をスタニスワフ・バロンチがポーランド語訳したテキストに、ポーランド近代の作曲家カロル・シマノフスキがとても印象的な曲を付けたのがこの「ハーフィズの愛の歌」です。ポーランド語の詩の著作権が不明ですので、ここではベートゲの原詩のドイツ語詞を掲載させて頂きました。この歌はドイツ語でも歌われることがありますのでご了承ください。
シマノフスキという人は、ショパンの流れを汲むマズルカやノクターンを思い切り病的に強調した氷のように美しいピアノ曲を書いたり、はたまたオペラ「ロジェ王」では、古代ギリシャを舞台に怪しい新興宗教に洗脳されていく人々を不思議なオリエンタリズムで描写したりと、ベルクやツェムリンスキーの崩れ落ちそうな冷たいロマンティシズムにほんのりと民族音楽や異国趣味の味付けをした、何とも言いがたい魅惑的な音楽を書いた人です。
そんな人がこの呆れるほど耽美的なハーフィズの詩(多分他の訳詩のときのようにベートゲの手によって更にその味は濃厚になっているものと思われます)にメロディを付けているのですからこれほどハマっている音楽もそうはないでしょう。
妖しくも美しい「愛の歌」がここに出来上がりました。
不治の病でやせ細った青白い顔の美人が、息も絶え絶えにささやく愛の告白のようなその音楽は、なぜか逆説的に妙に艶めかしく、ピアノの煌きも美しいけれどどこか不健康なエロスを漂わせています。
この手の近現代歌曲を多数録音しているドロシー・ドロウ(ソプラノ)、ルドルフ・ヤンセン(ピアノ)のコンビが緻密に演奏していて、そこから逆説的ににじみ出てくるエロスがなかなか素晴らしいですが(ETCETERA)、このCDでは歌唱はベートゲの原詩と思われるドイツ語で歌われています。
オリジナルになるポーランド語の歌唱では、ポーランドのMUZAレーベルにルコミスカのソプラノ、スリコフスキのピアノで録音がありますが入手は厳しいかも(シマノフスキ作品集のVol.6です。PNCD067)。
この歌曲集の姉妹編として、オーケストラ伴奏による「ハーフィズ愛の歌」という作品があります。曲は「踊り」と「恋に落ちた風」だけが一緒であとは別の詩から取られていますが、これも濃密な表情が一聴の価値あり。
対訳がないのが惜しいですが、Naxosにあるシマノフスキ・オーケストラ歌曲集が入手が容易でしょう。結構良い演奏だと思います。
( 2004.03.24 藤井宏行 )