弓春の賦 |
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1 弓
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矢を番 引き絞りたる弓の形 射よ、射よ、子等 鳥ならずして、射よ、 唯 的 子等 その形形 唯 |
2 |
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髪をきれいに 十六七の美少年。 さくら色した ようも似合うた みどりの 青い 南の海の精であろ。 きやしやな前歯に麦の茎 ちよいと つつみ ほそいづぼんに、赤い靴、 そよろと 五行ばかりの新しい 恋の 女の 物を思へど、 |
3 太陽出現
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大火の祭。 空が焦げる、 海が燃える。 子供らしい 地上の山山。 今、 世界に降らす 太陽が現れる。 |
4 晩秋
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赤い 点、点、点、点、 桜のもみぢ、 そして 涙ぐましい気にもなる。 わたしのためにあの空も 赤い サツフオオの住む 出て 泣くサツフオオが目に見える。 物の盛りの尽きる おお 点、点、点、点、しばらくは わたしの髪も |
5 二月の街
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街に来てゐる春よ春、 横顔さへもなぜ見せぬ。 春よ春、 うす 二月の肌を 早く あの 春よ春、 そなたの肌のぬくもりを その手には そして恋する赤い時。 春よ春、 おお、横顔をちらと見た。 緑の雪が散りかかる。 |
『弓春の賦』は作曲家の鈴木輝昭が合唱団・舫(もやい)の会の委嘱を受け、「与謝野晶子の詩集」から五つの詩を選んで「ピアノのための女性合唱曲」にした作品。2007年9月に初演された。『弓春の賦』という題名は鈴木輝昭がつけたもの。「1.弓」で、与謝野晶子は「子供が空に向かって弓から矢を放つ姿は美しい」と言っていることから、「弓を射る姿のように美しい春の詩歌」というような意味らしい。ただし、「春の歌」ではなく「初夏から始まり最後に春を待ち望む」という構成になっている。また、与謝野晶子の詩に見られる「抒情と浪漫的モダニズム」を強調する曲になっている。
「不死鳥(フエニクス)」は「西欧の空想上の鳥」で、「五百年に一度燃え尽きて、そこから復活する不死の鳥」。
「サツフオオ」は「古代ギリシャの女性詩人サッポー(サッフォー)」のこと。彼女は実在の人物であり、作品も残っているが、その生涯はあくまで「伝説」であり、くわしいことは不明。ちなみにサッポーの詩もイギリスのグランヴィル・バントックやギリシャのマノス・ハジダキスが歌曲にしている。
( 2012.10.28 滝光太郎 )