4 Orchesterlieder Op.22 |
4つのオーケストラ歌曲 |
1 Seraphita (Stefan Anton George)
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1 セラフィータ (ゲオルゲ)
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Mir windverschlagen auf des Lebens wilder See - Sei meine Fahrt auch voll von finster Sturm und Weh: Hier - jetzt - vereinen oder küssen wir uns nicht! Sonst löscht die laute Angst der Wasser vor der Zeit Das helle Leuchten,deines Angedenkens Stern, Der durch die Nächte herrscht - bleib von mir fern In deines Ruheortes Heiterkeit! Doch wenn der Sturm am höchsten geht und kracht Zerrissen See und Himmel. Mond in meiner Nacht! Dann neige einmal dem Verzweifelten dich dar. Lass deine Hand (wenn auch zu spät nun) hilfbereit Noch gleiten auf mein fahles Aug und sinkend Haar Eh grosse Woge siegt im letzten leeren Streit! |
われを風と吹き飛ばすな 人生の荒海の上で わが旅もまた 暗き嵐と嘆きに満ちしものであれ ここで-今-われらは抱きくちづけしあうことはない! 激しき水の苦悩がこの時の前に起こらぬように この明るき光 お前の記憶の星が 夜を支配するのだ-私から遠く離れて お前の安らぎの場所の清らかさの中に! だが嵐が最も激しく荒れ狂う時には 海や空を引き裂くのだ わが夜の月よ! その時には一度だけでもこの絶望にお前は寄り添っておくれ そしてお前の手を(もう手遅れなのだけれど)差し伸べておくれ 私の蒼ざめた瞳や打ちしおれた髪の上を滑らせて 巨大な大波が最後の空しき戦いに勝利する前に! |
2 Alle,welche dich suchen (Rainer Maria Rilke)
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2 すべて御身を探し求める者は (リルケ)
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Und die,so dich finden,binden dich An Bild und Gebärde. Ich aber will dich begreifen, Wie dich die Erde begreift; Mit meinem Reifen Reift Dein Reich. Ich will von dir keine Eitelkeit, Die dich beweist. Ich weiß,daß die Zeit Anders heißt Als du. Tu mir kein Wunder zulieb. Gib deinen Gesetzen recht, Die von Geschlecht zu Geschlecht Sichtbarer sind. |
そして御身を見出だせし者は御身を結びつけるのだ 姿や動作に だがしかし私は御身を理解したいのだ 御身を大地が理解しているように 私の成熟と共に 成熟するのだ 御身の王国も 私は御身に虚栄を求めはしない 御身の証として 私には分かっているのだ 時が 別の吊を吊乗っていることを 御身とは別の 我がために奇跡をなし給うな 御身の法則を正となし給え それは世代から世代へと 一層明らかになるのだから |
3 Mach mich zum Wächter deiner Weiten (Rainer Maria Rilke)
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3 われを御身の広野の番人となし給え (リルケ)
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Mach mich zum Horchenden am Stein, Gib mir die Augen auszubreiten Auf deiner Meere Einsamsein; Laß mich der Flüsse Gang begleiten Aus dem Geschrei zu beiden Seiten Weit in den Klang der Nacht hinein. Schick mich in deine leeren Länder, Durch die die weiten Winde gehn, Wo große Klöster wie Gewänder Um ungelebte Leben stehn. Dort will ich mich zu Pilgern halten, Von ihren Stimmen und Gestalten Durch keinen Trug mehr abgetrennt, Und hinter einem blinden Alten Des Weges gehn,den keiner kennt. |
われを石のもとで傾聴する者に われに広がりの眼差しを与え給え 御身の孤独の海の上に われを流れに沿って歩ませ給え 両岸の叫び声より離れて 遠く夜の響きの中へと われを御身の広大な土地へと送り給え 広々と風が吹きわたり 巨大な僧院が法衣のように まだ生を受けていない生命のまわりを取り囲む土地に そこで私は自ら巡礼のもとに留まろう 彼らの声や姿のもと いかなる欺瞞にも隔てられることなく ひとりの目の見えない老人の後に続き 誰も知らない道をゆくのだ |
4 Vorgefühl (Rainer Maria Rilke)
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4 予感 (リルケ)
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Ich ahne die Winde,die kommen,und muß sie leben, Während die Dinge unten sich noch nicht rühren; Die Türen schließen noch sanft,und in den Kaminen ist Stille; Die Fenster zittern noch nicht,und der Staub ist noch schwer. Da weiß ich die Stürme schon und bin erregt wie das Meer. Und breite mich aus und falle in mich hinein Und werfe mich ab und bin ganz allein In dem großen Sturm. |
私は吹き寄せる風を予感し、風を生きなければならない 下にある物事はまだ動きもしていないうちに 扉はまだ穏やかに閉じ 暖炉も静かだ 窓も震えておらず 埃も重たく積もっている そのとき私はこの嵐を既に知って 海のようにざわめいている そしてわが身を広げ また自らの中へと沈みこみ 自らを投げ出すのだ たったひとりで 大きな嵐の中に |
作品8に続いて久々のオーケストラ伴奏による歌曲集がこの作品22、1913~1916にかけての作曲ということで無調時代の作品ということになります。この1915年頃は彼の作品が非常に少ない上調の時期にあたります。それもあってかこの曲も現代作曲家の特徴に乏しい平板な作品のようにどうしても聴こえてしまうのか、極めて取り上げられることの少ない作品となっております。
私が耳にできたのもピエール・ブーレーズがBBC交響楽団を振った伴奏にメゾ・ソプラノのイヴォンヌ・ミントンが歌ったCBS録音のみ。この切れ味鋭い2人の共演にあってもどうも飛び抜けた魅力は感じられず、シェーンベルク作品の大好きな私に取っても取っつきにくい曲になっています。
ただ、詩のセレクションは大変に興味深いです。最初の詩はイギリスの憂愁の詩人アーネスト・ダウソンが書いたものを、シェーンべルクが頻繁にその詩を取り上げている象徴派詩人のシュテファン・ゲオルゲがドイツ語に訳したもの、そして2~4曲はリルケの詩です。第2曲目は「時祷集《の「巡礼の巻《より、第3曲目も同じ詩集の「貧困と死の巻《から。そして最後の曲が「形象集《からと、リルケの詩の中でもあまり歌として取り上げられることの少ない難解な哲学詩に曲が付けられているのです。一連の詩を訳してみて感じたのは、穿った見方かも知れませんがスランプにあった彼がなんとか壁を乗り越えようともがく姿。特にリルケの詩の選択にその感じが見て取れませんでしょうか。神への呼び掛けの形を取ってはおりますが、ここで彼が訴えているのは新しい芸術を作り出そうという決意表明のように私には思えます。
( 2012.08.17 藤井宏行 )