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Deux poèmes de Ronsard   Op.26
ロンサールの二つの詩

詩: ロンサール (Pierre de Ronsard,1524-1585) フランス

曲: ルーセル (Albert Roussel,1869-1937) フランス フランス語


1 Rossignol mon mignon
1 ナイチンゲール わが愛しき者よ

Rossignol mon mignon,qui dans cette saulaie
Vas seul de branche en branche à ton gré voletant,
Et chantes à l'envie de moi qui vais chantant
Celle qui'il faut toujours que dans la bouche j'aie.

Nous soupirons tous deux; ta douce voix s'essaie
De sonner l'amitié d'une qui t'aime tant,
Et moi triste je vais la beauté regrettant
Qui m'a fait dans le coeur une si aigre plaie.

Toutefois,Rossignol,nous différons d'un point
C'est que tu es aimé,et je ne le suis point,
Bien que tous deux ayons les Musiques pareilles:

Car tu fléchis t'amie au doux bruit de tes sons,
Mais la mienne qui prend à dépit mes chansons
Pour ne les écouter se bouche les oreilles.

ナイチンゲール わが愛しき者よ この柳の下で
枝より枝へと 思いのままに飛んで
そして歌うのだ 歌いたい私を駆り立てる歌を
いつでも私の口の中に秘めてあるものを

私たちは共にため息をつき お前の甘い声は
愛の響きを響かせようとする お前をとても愛している人への
私を悲しませ 私がくやしく思えるのはその美しさ
それは私の心を深く傷つけるのだ

けれども ナイチンゲールよ 私とお前は一点で違っているのだ
それはお前が愛されていて 私がちっとも愛されていないということ
ふたりとも同じ音楽を持っているというのに

お前はお前を愛する人の心をとろかせる お前の歌声の甘い響きで
なのに私はと言えば 歌を歌っても
それを聞くまいと 耳を塞がせるだけなのだ

2 Ciel,air et vents
2 空よ、大気と風よ

Ciel,air et vents,plains et monts découverts,
Tertres fourchus et forêts verdoyantes,
Rivages tors et sources ondoyantes,
Taillis rasés et vous,bocages verts,

Antres moussus à demi-front ouverts,
Prés,boutons,fleurs et herbes rousoyantes,
Coteaux vineux et plages blondoyantes,
Gâtine,Loir,et vous mes tristes vers

Puisqu'au partir,rongé de soin et d'ire,
A ce bel œil adieu je n'ai su dire,
Qui près et loin me détient en émoi,

Je vous suppli',ciel,air,vents,monts et plaines,
Taillis,forêts,rivages et fontaines
Antres,prés,fleurs,dites-le-lui pour moi.

空よ、大気と風よ、平原と禿山よ
うねる丘に緑の森よ
曲がりくねった川岸よ 流れ出る泉よ
刈り込まれた雑木林よ そしてお前 緑の茂み

苔むす洞穴よ 半ば口の隠された
牧場よ つぼみよ 花たちよ 露に濡れた草よ
ブドウ畑よ そして金色の麦畑よ
ガチーヌよ ロワールよ そしてお前たちわが悲しみの詩よ

私は行かねばならぬ 悩みと怒りに満ちて
あの美しい瞳にお別れを 私は言うことができなかったから
近くにいても 遠くにあっても私の心を乱すあの瞳に

お願いだ 空よ 大気よ 風よ 山々そして平原よ
丘よ 森よ 岸辺そして泉よ
洞穴よ 牧場よ 花たちよ 彼女に私からよろしくと伝えておくれ


1924年、詩人ロンサールの生誕400年を記念して雑誌「ルヴュ・ミュジカル《が企画したロンサールの詩につけた音楽はラヴェルをはじめとしてオネゲルやデュカ、カプレなど当時の錚々たる音楽家が参加しました。その中にこのアルベール・ルーセルもおり、伴奏にフルートだけを用いるソプラノの歌曲2曲を書いています。
管弦楽作品では新古典的な、と言いましょうか、独特のリズムと色彩感で強烈な音楽を書いているルーセルですが、歌曲の世界では印象派風の幻想的な音楽も多く、この曲もそんな感じです。
第1曲目は1555年の「続恋愛詩集《より。「マリーへのソネット2《と副題があります。詩の内容には特に補足が必要なところもないでしょうか。第2曲目は1552年の「恋愛詩集《より。こちらは「カッサンドルへのソネット《。ちなみにこのカッサンドルは人妻だったので、旅立ちの別れを直接告げることができず、それが「よろしく伝えてくれ《の最後の台詞となっているのだそうです。ガチーヌ(の森)やロワール(川)はロンサールの故郷。彼は多くの詩にこれらの地吊を織り込んでおります。

( 2011.11.13 藤井宏行 )