Walzer Gesänge nach toskanischen Volksliedern Op.6 |
トスカーナ地方の民謡によるワルツの歌 |
1 Liebe Schwalbe
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1 愛らしいツバメさん
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Du fliegst auf und singst so früh, Streuest durch die Himmelsbläue Deine süße Melodie. Die da schlafen noch am Morgen, Alle Liebenden in Ruh', Mit dem zwitschernden Gesange Die Versunk'nen weckest du. Auf! nun auf! ihr Liebesschläfer, Weil die Morgenschwalbe rief: Denn die Nacht wird den betrügen, Der den hellen Tag verschlief. |
あなたは空を飛んで楽しそうに歌い 青い空一面に振り撒いてるのね あなたの素敵なメロディを でも朝になっても眠ってるのよ 恋人たちはみな 穏やかに あなたのさえずる歌声で 深い眠りの人たちを目覚めさせましょう 起きて! さあ起きて!恋する寝ぼすけさんたち 朝のツバメが呼んでいるんだから 夜にだまされてしまいますよ 明るい昼間に眠ってる人は |
2 Klagen ist der Mond gekommen
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2 不満そうに月が昇ってきた
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Vor der Sonne Angesicht, Soll ihm noch der Himmel frommen, Da du Glanz ihm nahmst und Licht? Seine Sterne ging er zählen, Und er will vor Leid vergehn: Zwei der schönsten Sterne fehlen, Die in deinem Antlitz stehn. |
太陽の目の前へと 天はまだ月にとって値打ちのあるところなのか あなたが月から輝きと光を奪ってしまっても 天の星の数を月は数え始め 悲しみのあまり死にそうになった ふたつの一番美しい星が欠けていたのだ それはあなたの顔にあるのだ |
3 Fensterlein,nachts bist du zu
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3 小さな窓よ、夜にはお前は閉じている
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Tust auf dich am Tag mir zu Leide: Mit Nelken umringelt bist du; O öffne dich,Augenweide! Fenster aus köstlichen Stein, Drinnen die Sonne,die Sterne da draußen, O Fensterlein heimlich und klein, Sonne da drinnen und Rosen da draußen. |
昼間には開いているのに 悲しいことに カーネーションにお前は囲まれている おお開いてくれたなら、この目の楽しみとなったろうに! 高価な石でできた窓よ その中には太陽が、外には星たちがいる おお小さな窓よ、ひそやかで小さい窓 太陽がその中に バラたちは外に |
4 Ich gehe des Nachts
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4 私は夜にそぞろ歩く
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Ich suche,wo den Geliebten sie haben: Da hab ich den Tod,den finstern,gesehn. Er sprach: such nicht,ich hab ihn begraben. |
私は探すの、どこで恋人に逢えるだろうかと そうしたら私は会った、暗い死に 彼は言った:「探したって無駄さ、恋人は埋めちまったよ」と |
5 Blaues Sternlein
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5 青い小さな星よ
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Das Geheimnis gib nicht kund. Sollst nicht allen Leuten zeigen Unsern stillen Herzensbund. Mögen andre stehn in Schmerzen, Jeder sage,was er will; Sind zufrieden unsre Herzen, Sind wir beide gerne still. |
秘密を漏らしたりしないでおくれ みんなに明かしたりしないでおくれ 私たちのひそかな心の絆を 他の人たちは苦しませておくがいい みんな言いたいことを言うがいい 私たちのハートは満ち足りているし 私たちは喜んで静かにしているよ |
6 Briefchen schrieb ich
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6 手紙を書いたのは私
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Sie fielen ins Meer,und sie fielen auf Sand. Ketten von Schnee und von Eise,die bind' ich, Die Sonne zerschmilzt sie in meiner Hand. Maria,Maria,du sollst es dir merken: Am Ende gewinnt,wer dauert im Streit, Maria,Maria,das sollst du bedenken: Es siegt,wer dauert in Ewigkeit. |
手紙は海の上に落ち 手紙は砂の上に落ちた 雪や氷の鎖で 私はそれを束ねた そして太陽が私の手の中でその鎖を溶かしたのだ マリアよ、マリア、気付いておくれ 最後には勝つのだ、戦いの中に長くある者が マリアよ、マリア、考えておくれ 勝利するのは、永遠に耐えるものなのだ、 |
ツェムリンスキーの初期の作品の中でも、とても聴きやすいお洒落な歌曲集です。
イタリア、トスカナ地方の作者不明の詩をイタリアにも住んでいたドイツの歴史学者フェルディナンド・グレゴロヴィウス(Ferdinand Gregorovius 1821-1891)がドイツ語訳したもの6篇に、それぞれの詩の雰囲気に合ったワルツのメロディが付けられていますが、軽めのものあり、しっとりとした情感を湛えているものもあり、パワーに満ち溢れているものもありという具合に、大変に多彩で面白いです。
第1曲目は飛び交うツバメの姿をピアノのころころ転がるような分散和音も交えた軽快な響きで描きながら、幸せな朝の情景が歌われる楽しい歌。引き続いての2曲目は恋人を讃えている愛の歌のはずなのですが、歌詞に出てくる月のように何とも不機嫌な音楽です。この詩ですが、イタリア語の同じ原詩とされるものをエマニュエル・ガイベルがドイツ語訳したものに、フーゴー・ヴォルフがメロディを付けていて、彼の「イタリア歌曲集」の第7曲目として聴くことができます。大意は同じですが両者の詩は微妙にニュアンスが違います。
第3曲は一転してキッチュなワルツ。うきうきと踊りだしたくなるような楽しげな歌。ピアノの掛け合うメロディもお茶目です。
第4曲はワルツではありながらひたすら重く、暗いもの。短い曲であっという間に終わります。
第5曲は再び憧れに満ちた美しい音楽が戻ってきて、最終曲では力強く堂々としたメロディで華々しく盛り上がって終わります。
たいへん構成が良くできていてその上メロディが美しいので、ソプラノ歌手によって6曲通して歌われることがよくあり、珍しいところではイタリアの歌をお得意にされている松本美和子さんの録音があります。ドイツ語の響きに若干の違和感を感じなくもありませんが、3曲目や最終曲などではおそらく作曲者も意識していたであろうイタリア情緒がにじみ出てきて、なかなか興味深い聴きものになっています。
DGにある2枚組のツェムリンスキー歌曲集では、ほの暗い色合いの2・4曲をメゾのフォン・オッターが、残りをソプラノのバーバラ・ボニーが歌うという具合に分業していて、一曲一曲が実に絶妙に歌われています。
( 2010.04.15 藤井宏行 )