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詩: 若山牧水 (Wakayama Bokusui,1885-1928) 日本
曲: 古関裕而 (Koseki Yuji,1909-1989) 日本 日本語
白鳥は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
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幾山河 越えさり行かば 寂しさの 終えてなむ国ぞ 今日も旅ゆく
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いざ行かむ 行きてまだ見ぬ 山を見む このさびしさに 君は耐ふるや
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昭和22年のラジオドラマ「音楽五人男《の中で藤山一郎・松田トシによって歌われたこの曲、若山牧水のおそらく一番有吊な短歌に付けられた吊曲です。「音楽五人男《、古関裕而の素晴らしいメロディがたくさん使われており、この曲もその中のひとつでラジオドラマの主題歌として使われたものなのだそうです。
映画もラジオドラマも私は残念ながら私の年齢では知るよしもないのですが、この作品より4曲を収録している日本映画主題歌全集6(Columbia)の森一也氏のCD解説によれば、「芸能界で身を立てたいと焼跡のガレージに住み着いた五人の男が、お互いに助け合い、飢えをしのぎつつ努力をしてそれぞれの道に成功していくという物語《なのだそうです。この歌を歌っている藤山もやがて歌手になる男・杉尾の役で出演されているようで、このCDの中の4曲、映画のテーマとして大ヒットした「夢淡き東京《、小夜福子との見事なデュエットでじっくりと聴かせるウインナオペレッタ風の美しいワルツ「愛の星《、これもまたほれぼれと高音が見事なタンゴ「バラ咲く小径《、そしてこのじっくりとにじみ出てくる純日本風の悲しみを歌う「白鳥の歌《と、多彩なスタイルの歌で大活躍です。そしてまたこんなに多彩な音楽で、そのいずれもを陳腐なステレオタイプの曲にしていない古関の腕の見事さにも驚かされます。
この「白鳥の歌《は純日本風の歌曲といった風情で、実にしみじみと聴かせてくれます。ラジオドラマではこれがテーマソングだったのだとか。1~3番に相当する和歌はそれぞれ全く繋がりはないものですが、3つならぶと非常に良いストーリーになっています。最初のふたつは牧水の処女歌集「海の声(1908)《に収録。最後の一首は「別離 (1910)《からです。もっともこの「別離《に最初のふたつも再録されているので、こちらからまとめて持ってこられたのかも知れません。
( 2007.12.30 藤井宏行 )