Trois chansons de France L 102 |
フランスの3つの歌 |
1 Le temps a laissié son manteau (Charles,Duc d'Orléans)
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1 時はその外套を脱げり (オルレアン,シャルル・ド)
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De vent,de froidure et de pluye, Et s'est vestu de brouderie De soleil luyant,cler et beau. Il n'y a beste ne oyseau Qu'en son jargon ne chante ou crie. Le temps a laissié son manteau. Riviere,fontaine et ruisseau Portent en livree jolie Gouttes d'argent d'orfaverie ; Chascun s'abille de nouveau. Le temps a laissié son manteau. |
風と寒さと雨の衣を そして纏えり 刺繍の衣 明るく美しき太陽の輝きの 鳥も獣も諸共に おのが言葉で歌い叫ぶ 「時《はその外套を脱げり 大河も泉もせせらぎも 纏うはそのあでやかな晴着 銀の雫にかざられた ものみな新たな装いをなす 「時《はその外套を脱げり |
3 Pour ce que Plaisance est morte (Charles,Duc d'Orléans)
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3 喜びが死んでしまったゆえ (オルレアン,シャルル・ド)
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Ce may,suis vestu de noir; C'est grand pitié de véoir Mon coeur qui s'en désconforte. Je m'abille de la sorte Que doy,pour faire devoir, Pour ce que Plaisance est morte, Ce may,suis vestu de noir. Le temps ces nouvelles porte Qui ne veut déduit avoir; Mais par force du plouvoir Fuit des champs clore la porte, Pour ce que Plaisance est morte. |
五月というのに われは黒衣をまとう こんなものを見るのはとても悲しい わが心がかくも沈んでいるのを かようにわれが装えるは その努めを果たさんがため 喜びが死んでしまったゆえ 五月というのに われは黒衣をまとう この知らせをもたらせし「時《は もはや華やかさを持つことあたわず 涙雨いたく降り注ぐゆえ 野を引き上げ その戸を閉ざす 喜びが死んでしまったゆえ |
ドビュッシーはその後期においては、歌曲の詩を古典作品に求めることが多くなります。1904年に作曲されたこれら2曲も詩は15世紀の皇族詩人シャルル・ド・オルレアン、その2つのロンデルを非常に格調高い歌曲にしてくれました。この作品は出版されたときには第2曲にこちらは17世紀の詩人トリスタン・レルミットによる「洞窟《という歌曲を挟んで「フランスの3つの歌《ということになっていましたが、その後この曲は次の歌曲集に転用されたために、現在ではこの2曲が「フランスの2つのロンデル《という題吊で紹介されることもあります。「洞窟《の詩はそちらの方でご紹介しておきました。
日本で言えば室町時代の和歌を訳すような古い言葉との悪戦苦闘ですので、いくつか全く意味が取れなかったところもあり、とんでもない誤訳をしている可能性もありますがご容赦のほど。また日本の古文の知識もろくにないのですが、音楽のイメージに合わせて文語調めいた訳にしてみました。やってみてわれながら陳腐だなあとは思いましたが、やり直す時間も気力もありませんのでそのままご紹介いたします。
第1曲目は春がやってきた喜びを歌っています。どんよりと空を覆う雲を外套に見立てて、それを「季節《が脱ぎ捨てて明るい春がやってきた喜びを歌っています。
第2曲目は邦訳ではよく「プレザンスみまかりたれば《とされているのを見かけます。このプレザンスというのは「喜び《の意味もあるのですが、そこでは親しい人の吊前と見て、その人が死んでしまった悲しみを歌っていると読んでいるようです。そちらの方が詩的ではありますが、私は意味が分かりやすい方がいいので、「喜びが死んでしまったので《という方の解釈にしました。
( 2007.11.17 藤井宏行 )