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5 Lieder von “Der siebente Ring” von Stefan George   Op.3
シュテファン・ゲオルゲの「七つ目の輪」による歌曲集

詩: ゲオルゲ (Stefan Anton George,1868-1933) ドイツ

曲: ウェーベルン (Anton Webern,1883-1945) オーストリア ドイツ語


1 Dies ist ein Lied
1 ひとつの歌がある

Dies ist ein Lied
Für dich allein:
Von kindischem Wähnen
Von frommen Tränen...
Durch Morgengärten klingt es
Ein leichtbeschwingtes.
Nur dir allein
Möcht es ein Lied
Das rühre sein.

ひとつの歌がある
あなただけのための歌だ:
子供っぽい夢と
心の底からの涙の歌だ...
朝の庭を越えてそれは響く
軽やかな調べで。
あなただけのもとへ
歌を贈ろう
心動かす歌を。

2 Im Windesweben
2 風のそよぎに

Im Windesweben war meine Frage nur Träumerei.
Nur Lächeln war was du gegeben.
Aus nasser Nacht ein Glanz entfacht -
Nun drängt der Mai,
nun muß ich gar um dein Aug' und Haar
alle Tage in Sehnen leben.
風のそよぎに私の問いはただの夢まぼろし。
ほほ笑みだけはあなたがくれたもの。
このじめじめした夜に輝きが燃え立つ-
もう5月も終わりだ,
さあ私は生きていこう あなたの瞳と髪のもとで
毎日毎日 恋する人生を。

3 An Baches Ranft
3 小川のほとりで

An Baches Ranft
Die einzigen frühen
Die Hasel blühen.
Ein Vogel pfeift
In kühler Au.
Ein Leuchten streift
Erwärmt uns sanft
Und zuckt und bleicht.
Das Feld ist brach,
Der Baum noch grau...
Blumen streut vielleicht
Der Lenz uns nach.
小川のほとりで
ただひとつ早くやってくるのは
ハシバミの花盛り。
一羽の鳥がさえずる
冷え冷えした牧場の中で
光が射してきて
私たちを穏やかに暖め
そしてきらめき青ざめる。
田畑はまだ耕されておらず
木はまだ灰色だ...
花たちはおそらく蒔いてくれるのだろう
春を私たちに もうほんのしばらくしてから。

4 Im Morgentaun
4 朝露の中を

Im Morgentaun trittst du hervor
den Kirschenflor mit mir zu schaun,
Duft einzuziehn des Rasenbeetes.
Fern fliegt der Staub...
Durch die Natur noch nichts gediehn
von Frucht und Laub
Rings Blüte nur - Von Süden weht es.

朝露の中をあなたは踏み分けてゆく
桜の花を私と一緒に眺め、
芝生の花床の香りをかぐために
遠くに砂煙が舞っている...
この自然の中 まだ何も茂ってはいない
木の実も そして木の葉も
花の輪だけが - 南がらやってくるのだ
5 Kahl reckt der Baum
5 裸で木が伸ばしている

Kahl reckt der Baum
im Winterdunst
sein frierend Leben.
Laß deinen Traum
auf stiller Reise
vor ihm sich heben!
Er dehnt die Arme -
Bedenk ihn oft
mit dieser Gunst,
daß er im Harme
daß er im Eise
noch Frühling hofft!

裸で木が伸ばしている
冬の靄の中
その凍りついた命を。
あなたの夢も
この静かな旅の間
木の前に立たせよう!
木はその腕をさし伸ばす -
しばしその木のことを思うがいい
ありったけの好意をもって
木は苦悩の中を
木は氷の中を
なお春を待ち焦がれて立っているのだから!

ウェーベルンという作曲家は12音技法と言う前衛音楽を先鋭化させた人として音楽史に残っているような感がありますが、意外なことに残した作品の中でも声楽作品の比率は非常に高いものがあります。民謡詩である「子供の不思議な角笛」やゲーテの名詩に付けた興味深い作品などもあり、じっくり探訪するととても面白いものがあるのですが、ここでは初期のシュテファン・ゲオルゲ(1868‐1933)の詩につけた作品を取り上げます。
ゲオルゲというと、現代ドイツ詩の礎を築いたとも言われる大御所の詩人で、シェーンベルクを筆頭に現代ドイツ音楽の作曲家が好んで曲を付けている人です。それもありまして詩の言葉遣いなどはかなり難解なところもあり、うまく意味が取れているかどうか非常に不安なところもあるのですが、何とか現在できる範囲で訳したものをUPします。
詩は1907年に出版された「7つ目の輪」より。ウェーベルンの作曲したのが1909年といいますから詩集が出て程ない時期のもの。ウェーベルンとしてもようやく彼の作曲スタイルが固まってきた時期の作品でもあるからでしょうか。前衛性と叙情性の微妙なバランスが初々しくも美しく、大変に聴き応えのある歌曲集です。ちなみに彼はこの次の歌曲集Op.4にもゲオルゲの詩を取り上げており、また作品番号のない作品でもいくつかゲオルゲの詩に付けたものもあることから、彼の歌曲の中でもゲオルゲというのはとりわけ若き日には重要な位置を占めていた詩人でありました。
この歌曲集に取り上げられた詩に描かれているのは、冬から早春にかけての恋する人へのほのかな憧れ。私の受けたのは実らなかった恋への甘くも苦い感傷が、鋭い言葉で刻み込まれているというイメージです。


( 2007.10.06 藤井宏行 )