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Trois chants de Noël  
3つのクリスマスの歌

詩: ルーダート (Albert Rudhardt,1894-1944) スイス

曲: マルタン (Frank Martin,1890-1974) スイス フランス語


1 Les Cadeaux
1 贈り物

J’ai vu trois rois sur le chemin
Tous plus beaux les uns que les autres,
Ayant des cadeaux plein les mains.
A côté des leurs,que seront les nôtres
Autant dire: rien!
Ils ont mis vers le petit prince
La myrrhe,l’or et l’encens.
Nos pauvres présents paraissaient bien minces
Près des trésors de trois provinces.
Il a regardé les bijoux.
Nous,nous restions sans rien dire.
Puis il a regardé vers nous
Et son premier sourire
Fut pour nous.

ぼくは見た 3人の王様が道を行くのを
皆お互いに美しさを競い合うような姿で
手には一杯の贈り物を持っていた。
彼らに比べたら、ぼくたちは一体何なのだろう?
言ってみれば、何もない!
王様たちは小さな御子の前に置いた
ミルラを、黄金をそしてお香を
ぼくたちのみすぼらしい贈り物なんかかすんでしまった
彼らの3つの国の宝物に比べたら。
御子は宝物を見られた
ぼくたちは、ぼくたちは黙って傍に立っていた
すると御子はぼくたちの方を向いて
初めて微笑まれたのだ
ぼくたちに向かって。

2 Image de Noël
2 クリスマスの絵姿

L’enfant Jésus des images,
le beau bébé rose et blanc
Tend ses deux poings vers les mages
Ou vers un berger tremblant.
Le boeuf,sans cérémonie,
Rumine en grondant un peu.
Et la Vierge en manteau bleu
Sourit à la compagnie.

絵姿の中のみどり児イエスは
美しい子供、赤と白の肌をしてる
両の手を差しのべる。三賢人や
震えている羊飼いに向かって
牡牛たちも騒いだりせずに
くつろぎながら反芻している
そして青いコートを着た聖母は
皆に微笑みかけている

3 Les Bergers
3 羊飼いたち

Il n’était pas encore minuit
Que la nouvelle étoile a lui
Pour éclairer la terre.
Puis soudain la ciel s’entrouvrit,
Et vêtus de lumière,
On pouvait voir en Paradis
Tous les anges réunis
En prière.
Par les déserts,marchant pieds nus,
Tous les bergers étaient venus
Jusqu’à la pauvre hutte.
Ils amusaient l’enfant Jésus
Avec des airs de flûte.
Les anges chantaient: Gloria!
Et les pâtres: Hosanna!
Alléluia,Alléluia…

それはまだ真夜中になる前だった
新しい星が輝き
この地上に光をもたらしたのは
突然空は明るくなり
そして光の衣を着て
まるで天国にいるかのように
天使たちが集まって
祈りを捧げている
砂漠を越えて、素足のままで
羊飼いたちはやってきた
このみすぼらしい馬小屋に
彼らは幼子イエスを楽しませた
笛の奏でる歌とともに
天使たちは歌っていた「グローリア!《と
そして羊飼いたちは「ホザンナ!《と
アレルヤ アレルヤ アレルヤ!


スイスの作曲家フランク・マルタンの1947年の作品。当時15歳だった彼の娘へのクリスマスプレゼントとして書かれたものだといいます。詩人のAlbert Rudhardt(1894-1944)については詳しい経歴は分かりませんでしたが、スイスでもフランス語圏のジュネーブ出身の詩人だそうで、この曲もフランス語です。
ピアノの伴奏に、ピアノ以上に活躍するフルートのオブリガートが付いた歌曲で、詩の美しさも含めてなかなか魅力的な作品になりました。マルタンというと12音技法などにも手を染めている現代音楽の人なのですが、その音楽には上思議なことに何とも濃厚な人間くささが垣間見えて素晴らしいのです。

第1曲目の「贈り物《、この曲が一番現代音楽っぽいでしょうか。フルートが旋律美には乏しい無窮動のようなパッセージをひたすら吹き続ける中、ハープをかき鳴らすような美しいピアノのアルペジオにのせて意味深長な詩が語るように歌われます。
第2曲「クリスマスの絵姿《は一転してたいへん静かにゆったりと、古典的な佇まいが美しい曲になりました。低音で伴奏するフルートがとてもきれいです。あまりマルタンの個性は出ていないかも知れませんがこの美しさはそれはそれで魅力的な曲になっています。
第3曲「羊飼い《はまたフルートが天駆けるように活躍する中、ピアノと声は教会の中で歌われている聖歌をそのままなぞっているかのよう、この両者の絶妙な掛け合いがたいへんに美しいです。3曲の中では一番鮮烈な印象を残すでしょうか。最後の「アレルヤ《の部分など感動的。

DGから出ているメゾソプラノのアンネ・ソフィー・フォン・オッターの歌にベンクト・フォシュベリのピアノ、そしてアンドレアス・アーリンのフルートによる演奏が入手も比較的容易でしょうし、この曲の美しさが十全に表現されていて大変聴き応えがあります。このCD、室内楽伴奏によるフランス歌曲を集めていて、選曲も魅力的ですし(フォーレ自身による「優しき歌《の室内楽伴奏版なんていうのも聴けます)、フランス歌曲を愛する方はぜひ耳にされてはいかがでしょうか。
もう1点私が聴くことができたのは、作曲者自身のピアノにエリー・アメリンクのソプラノ、ピエール・オデのフルートの1966年録音(EMI)。スイスのレーベルJecklinから「フランク・マルタン自作自演集《として復刻されているのを手に入れることができました。フルートの音がまるで篠笛のように聴こえる中、アメリンクの清清しい声で聴くクリスマスソングですから上思議な雰囲気を持った演奏になりました。フォン・オッターのでこの曲を気に入られた方はぜひ探してみてください。第2曲なんかは息を飲むような美しさです
まだ若いアメリンクの歌はちょっと硬いところもありますが、この歌曲集ではそれがプラスに働いています。

( 2006.12.24 藤井宏行 )