S njanej Detskaja |
乳母といっしょに 「子供部屋」 |
"Rasskazhi mne,njanjushka, Rasskazhi mne,milaja, Pro togo pro buku strashnogo: Kak tot buka po lesam brodil, Kak tot buka v les detej nosil I kak gryz on ikh belyje kostochki, I kak deti te krichali,plakali! Njanjushka! Ved' zato ikh,detej-to,buka s""el, Chto obideli njanju staruju, Papu s mamoj ne poslushali. Ved' zato on s""el ikh,njanjushka? Ili vot chto: Rasskazhi mne luchshe pro carja s caricej, Chto za morem zhili v teremu bogatom. Jeshchjo car' vsjo na nogu khromal, Kak spotknjotsja,tak grib vyrastet, U caricy to vsjo nasmork byl, Kak chikhnjot,stekla v drebezgi! Znajesh',njanjushka: Ty pro buku to uzh ne rasskazyvaj! Bog s nim,s bukoj! Rasskazhi mne,njanja,ty,smeshnuju-to! " |
お話してよ ぼくに ナニューシュカ お話してよ ぼくに ねえ あのお話だよ、こわいオオカミのお話 森に住んでるオオカミ 子供たちを森へ連れて行って 骨までかじっちゃうオオカミ 子供たちは叫んで、泣いちゃうの! ナニューシュカ! オオカミが食べちゃった子供は ナニィを怒らせて パパやママのいうことを聞かなかったから だからオオカミが食べちゃったの? こんなお話もいいな 王様とお妃様のお話をしてよ 海辺の立派なお城に住んでる王様たちのお話 王様は足が悪くて つまづいて転ぶたびに そこからキノコが生えるの お妃様はひどい風邪をひいてて くしゃみをしたら、窓ガラスがみな割れちゃうの! ねえ、ナニューシュカ もうオオカミのお話は聞きたくない! オオカミはほっといて、別のお話にしようよ! お話してよ ナーニャ、ねえ、笑っちゃうお話がいいな! |
男の子が心に思いつくままにぺらぺらとしゃべっている言葉を、おどけながらポツポツと鳴るピアノと掛け合いながら絶妙に表現した第1曲、7/4拍子で始まる拍子がふらふらと次々に変わるのがほんとうに気まぐれな子供のようでとても面白いです。フーゴ・ヴォルフの最良のメーリケ歌曲にも負けないユーモアと繊細さが光ります。
最近聴いたゼーフリートの録音(1953年ライブ DG)がドイツ語だったものでそんなことを思いました。ヴォルフの歌曲がお好きな方はぜひ聴いてみて頂けると良いと思います。彼女の表現力の絶妙さのおかげか、ドイツ語訳で歌われていてもさほどの違和感は感じませんでした。
乳母への呼びかけをどう訳そうか迷いましたが、日本で乳母と暮らした幼少時代を経験されたことのあるリッチな育ちの方はほとんどおられないと思いますし、あまり実感なく「ばあや」とか「乳母や」とか訳すのもピンとこないような気がしましたのでナニィ(あるいは愛称であるナニューシュカ/ナーニャ)と歌われる音通りにしています。ゼーフリートが歌っていたドイツ語訳でもそのようにされていて、音の響きがとてもよかったので私もそうすることにしました(ナーニャというよりはニャーニャーと聴こえてネコを呼んでるみたい)。できるだけ原詩と言葉の対応を取るように心がけましたので少々流れが悪くなっているところがありますが、この「子供部屋」は、言葉と組み合わさって初めて本当の魅力が分かる曲のように思えるのであえてそうしています。
最初に聴いたときのCDライナーの英訳がけっこうひどかったためか、今まで私もこの歌曲集の素晴らしさには気付かずにいたのですが、リンク集にある「あそびの音楽館」にあるJun-Tさんの生き生きとした訳詞に目を開かれました。それから今回私も訳しながら聴いていてすっかり虜になってしまいましたので下手な訳も省みず載せることにしました。けっこう既訳でも勝手にシチュエーションを変えたり部分を端折ったりといい加減なものが散見されましたので、こんな訳でも少しは役にたつかなあ、と。Jun-Tさんの詞ほど生き生きしてませんが、私のできる範囲で原詩にできるだけ忠実に訳してみました。
なお、上で「オオカミ」と訳している(多くの英訳でもそうなっていた)”BUKA”ですが、正しくはロシア民話に出てくる森に住む怪物のようです。これもそのまま「ブッカ」とでもしておいても良かったのですけれど、それでは読んでいて分かりにくいので「赤ずきんちゃん」のイメージで多くの英訳通りオオカミにしています。
ドイツ語訳も、歌える歌詞としては大変よくできていると思いました。耳で聴いてもよく音にはまっているように感じましたし、何より歌っているゼーフリートが本当に素敵です。
( 2006.01.28 藤井宏行 )