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Land Of Hope And Glory    
 
希望と栄光の国  
    

詩: ベンソン (Arthur Christopher Benson,1862-1925) イングランド
      

曲: エルガー (Edward Elgar,1857-1934) イギリス   歌詞言語: 英語


Dear Land of Hope, thy hope is crowned.
God make thee mightier yet!
On Sov'ran brows, beloved, renowned,
Once more thy crown is set.
Thine equal laws, by Freedom gained,
Have ruled thee well and long;
By Freedom gained, by Truth maintained,
Thine Empire shall be strong.

Land of Hope and Glory,
Mother of the Free,
How shall we extol thee,
Who are born of thee?
Wider still and wider
Shall thy bounds be set;
God, who made thee mighty,
Make thee mightier yet.
God, who made thee mighty,
Make thee mightier yet.

Thy fame is ancient as the days,
As Ocean large and wide:
A pride that dares, and heeds not praise,
A stern and silent pride:
Not that false joy that dreams content
With what our sires have won;
The blood a hero sire hath spent
Still nerves a hero son.

希望の国よ、汝が希望は冠を戴く
神は汝を一層強大にし給う
祖国の崇高な眉目の上に、敬愛と賞賛を浴びながら
ふたたび王冠は戴かれる
自由を勝ち取った汝が平等の精神は
祖国を永く、平和に治める
自由を勝ち取り、真理を保ち
我等が帝国は強大となろう

希望と栄光の国よ
自由の母よ
我ら祖国の子等は
如何に汝を称えん
より広く、広く
我等が領土は広がっていく
祖国を強大にした神よ
さらに祖国を強大にし給え
祖国を強大にした神よ
さらに祖国を強大にし給え

汝が名声は歴史と同じくらい古く
大海原と同じくらい広い
挑戦し、賞賛を気にかけない勇気
厳格で、静かな勇気は
夢で満足するような偽りの喜びではなく
我等の祖先が勝ち取ったものだ
偉大な先祖が流した血は
今も我等を勇気づける
 

エルガーの作曲した有名な行進曲”Pomp and Circumstance(威風堂々)”の第一番には歌詞がつけられて、イギリスの第2の国歌ともいうべき国民的愛唱歌になっています。BBCのプロムナードコンサート(プロムス)でも必ず取り上げられ、観客と一緒に歌いながら盛り上がるシーンを中継などで見られた方も多いのではないでしょうか。
ただ、正しくはこの「希望と栄光の国」というのは威風堂々とは独立した歌曲/合唱曲で、威風堂々のトリオの部分だけがメロディーとして一緒なのです。
したがって威風堂々の中で聴くことができるのは”Land of Hope and Glory, Mother of the Free”の部分のみ、他の部分は威風堂々より後に作曲された「戴冠式頌歌」もしくはそこから更に編曲された歌曲「希望と栄光の国」で聴くことができます。
この「希望と栄光の国」は初演者のアルト歌手、Dame Clara Buttの歴史的録音が残っていますが、貫禄の声量と格調でなかなか良いです。中間部の名旋律はコーラスで一層映えますが、この人の非常に太いアルトで聴くのもまた一味違いますし、何より消え行く大英帝国のレクイエムのような感慨に耽ることができます。

考えてみれば、この曲とこの詩、日本で言えば「金鵄輝く日本の...」とか「天に替わりて不義を討つ...」とかいう軍歌や愛国歌の系統の歌ですね。領土拡大の強い意志を歌う、まさに帝国主義時代の産物です。君が代を学校の卒業式で歌うのも大騒ぎになる日本と、ワールドカップの大会などでこんな歌詞の歌を今も斉唱するイギリスとの愛国心の違いを感じながら、少々大袈裟な言葉で訳してみました。
(明治時代から即席で帝国主義を学んで失敗し、もう考えたくもないという感じの日本と、古くから筋金入りの帝国主義を貫き通し、栄光の時代を今も懐かしさと共に思い出す英国の余裕の差とでも言いましょうか...)

祖国のことを「お前」と呼びかけるのは西洋特有の言い回しで、ちょっと日本人の感覚とずれているところがあるので、一部言い換えてあります。
古い英語なので、よく意味が取れなかったところは思い切り意訳(捏造?)してみましたのでご注意ください。

( 2002.12.23 藤井宏行 )


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