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Noch’   Op.48-8  
  12 russkikh pesen
夜  
     12のロシアの歌

詩: プーシキン (Aleksandr Sergeyevich Pushkin,1799-1837) ロシア
      Ночь (1823)

曲: ルビンシュテイン (Anton Grigoryevich Rubinstein,1829-1894) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Moj golos dlja tebja i laskovyj i tomnyj
Trevozhit pozdneje molchan'je nochi tjomnoj.

Bliz' lozha mojego pechal'naja svecha Gorit.
Moji stikhi tekut slivajas' i zhurcha,
Tekut... ruch'i ljubvi,polny toboj!
Vo t'me,tvoji glaza blistajut predo mnoj,
Mne ulybajutsja i zvuki slyshu ja!

Moj drug,moj nezhnyj drug,ljublju... Tvoja... tvoja!
ぼくの声はきみへ向け 優しくも哀しく
夜の闇の静けさを打ち破って響く

ぼくのベッドのそばには 悲しげにろうそくが燃える
ぼくの言葉は溶け合ってざわめくように
流れる...愛の調べ きみへの想い
暗闇の中、ぼくの前できみの瞳は輝く
瞳はぼくに微笑みかけ、ぼくには聞こえる、きみの声が!

私のひとよ、愛しいあなた、私は好き...あなたが...あなたが


ルビンシュテインの歌曲の中では現在もっとも良く歌われるもののようでしょうか。濃厚な情緒がまるでオペラアリアのように響きます。夜のほの暗い部屋、明かりといえばろうそくだけ。そんな中、ふたりっきりで愛をささやく...プーシキンの詩も夢見るように美しいラブソングです。
最後の愛する人からの素敵な返事は本当に聴こえてきたものなのか、それとも心の中で聴こえたように思えた幻なのか? ピアノが同じメロディをこだまのように返しながら繰り返すエンディングは演奏効果抜群。プーシキンの詩につけた歌曲の中で、いやロシア歌曲すべてを見渡してもこれほどまでロマンティックな音楽は他にないかもしれません。
この濃密さを見事に再現してくれているのはロシアのソプラノ、ゴルチャコーワの歌ったもの、最後の盛り上がりなど実に見事です。ただ私としてはこの曲に関してはあまりロシア臭くない方が良くて、ネタニア・ダヴラツの歌った録音の方がなんというか愛着があります。か細ささえ感じさせる声で、あまり濃密にならず爽やかに歌っているのが何とも心地よいのです。彼女の歌は日本ではカントルーブの「オーベルニュの歌」の録音ばかりが持てはやされますが、Vanguardレーベルに入れたムソルグスキーやチャイコフスキー、リムスキー=コルサコフなどの歌曲はどれも素晴らしいものばかり。すでにいくつか取り上げていますが、これからもたびたび取り上げたいと思います。

このプーシキンの詩、ムソルグスキーやリムスキー=コルサコフといったロシアの他の作曲家たちも曲を付けていて、そのいずれもが美しいロマンスになっています。中でもこのルビンシュテインのものと並んで溜息ものの美しさだと私が思ったのはニコライ・メトネルのもの。Chandosにあるメトネル歌曲集(L.Andrewのソプラノ)の冒頭を飾っていますので機会があればぜひ聴き比べてみてください。

( 2006.01.13 藤井宏行 )


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