Unfall Gedichite von Eichendorff für eine Singstime und Klavier |
災難 アイヒェンドルフ歌曲集 |
Ich ging bei Nacht einst über Land, ein Bürschlein traf ich draußen, das hat 'nen Stutzen in der Hand und zielt auf mich voll Grausen. Ich renne,da ich mich erbos', auf ihn in vollem Rasen, da drückt das kecke Bürschlein los und ich stürzt' auf die Nasen. Er aber lacht mir ins Gesicht, daß er mich angeschossen, Cupido war der kleine Wicht - das hat mich sehr verdrossen. |
ある夜田舎道を進んで行くと ひとりの若造に出くわした そいつは小銃を持っていて ぞっとすることに俺に狙いをつけた 俺は怒りに燃えあがり 全力でそいつに突進した だが生意気な若造はぶっ放し 俺は鼻から地面に落ちた やつは俺の顔を見て笑いやがった 人を撃っておきながら そのちび野郎はキューピッドだったんだ・・・ まったくもって腹が立つ |
シェックが作曲しているメーリケの「不良品」を思わせる、風変わりなキューピッドが出てくる面白い詩。戯曲『マリーエンブルク要塞の最後の勇士』”Der lentze Held von Marienburg”(1830)の挿入詩で、登場人物ハンス・フォン・バイゼンの歌です。
戯曲は1410年にドイツ騎士団がポーランド・リトアニア連合軍との名高い「タンネンベルクの戦い」で大敗したあとに、包囲されたマリーエンブルク要塞防衛の指揮をとって敵軍を撃退し、騎士団長となったハインリッヒ・フォン・プラウエンの物語。詩集に収められたものの題名は”Der Landreiter”(騎兵下士官)となっており、詩の主人公は徒歩ではなく馬に乗っているわけです。路上で銃を突きつけられて、怖れるどころかいきなり突進するという無鉄砲も、中世の騎兵の話となると納得もいきます。
歌曲についている題名”Unfall”がヴォルフによるものかどうかわかりませんが、戯曲の設定に限定されないための配慮かもしれません。CDなどの歌詞カードでは四行三連の詩として印刷されていることが多いですが、戯曲中でも詩集に掲載されているものにも改行はありません。
ヴォルフのつけた曲は、シューベルト=ザイドルの”Der Wanderer an den Mond”を思わせるようなリズムで始まる親しみやすい音楽です。主人公が倒れた擬音や、キューピッドの笑い声がピアノでユーモアたっぷりに奏されます。演奏はユーモラスにほら話を聞かせてくれるプライ(エンジェル)、雄弁なスコウフス(ソニー)。往年の名ソプラノ、エルナ・ベルガーが歌っているのには驚かされます。
( 2005.10.13 甲斐貴也 )