Der verzweifelte Liebhaber Gedichite von Eichendorff für eine Singstime und Klavier |
失恋した男 アイヒェンドルフ歌曲集 |
Studieren will nichts bringen, mein Rock hält keinen Stich, meine Zither will nicht klingen, mein Schatz,der mag mich nicht. Ich wollt',im Grün spazierte die allerschönste Frau, ich wär' ein Drach' und führte sie mit mir fort durchs Blau. Ich wollt',ich jagt' gerüstet und legt' die Lanze aus, und jagte alle Philister zur schönen Welt hinaus. Ich wollt',ich läg' jetztunder im Himmel still und weit und fragt' nach all' dem Plunder nichts vor Zufriedenheit. |
勉強は頭に入らず 一張羅はボロボロ チターを弾く気もしない あの娘は僕を好きじゃないんだ 僕は思う、緑の野をそぞろ歩く 絶世の美女を 竜に変身してかっさらい 青空の彼方まで連れ去ってやりたい 僕は思う、狩の支度をして 長槍を構えて出陣し ペリシテ人どもを全部狩り立て 世直しをしてやりたい 僕は思う、今すぐにでも 静かで広々とした天国で横になり どんな俗事にもわずらわされずに のんびりとしていたい *)ペリシテ人:旧約聖書において神の民とされるイスラエル人の宿敵でギリシャ系の古代民族。転じて「俗物」「教養の無い人間」の意に使われる。 |
”Der Scholar”の主人公を思わせる学生が嘆いているようですが、こちらは小説の挿入詩ではなく独立の作品です。竜に変身して美女を誘拐する話など、何か出典がありそうですがいまのところ分かりません。
ヴォルフはこの他愛も無い詩に短いながら変化に富む緊迫感のある曲をつけました。シューベルトの「美しき水車小屋の娘」の後半の一節を思い出させるようなところもありますが、そのような真摯な解釈の代表格としてフィッシャー=ディースカウの歌唱を挙げます。その言葉とリズムの立ち上がりの鋭さは圧倒的、さすがはヴォルフ歌いとして名高い御大F=Dです。それに対しホッターの解釈は失恋男の傷心を暖かく見つめる余裕とユーモアがあります。プライはその中間で、自分のこととして怒りまくってはいるものの、決してこの世の終わりではないといった風情です。
( 2005.10.09 甲斐貴也 )