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Heimweh    
  Gedichite von Eichendorff für eine Singstime und Klavier
望郷  
     アイヒェンドルフ歌曲集

詩: アイヒェンドルフ (Josef Karl Benedikt von Eichendorff,1788-1857) ドイツ
    Gedichte - 1. Wanderlieder  Heimweh

曲: ヴォルフ (Hugo Wolf,1860-1903) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Wer in die Fremde will wandern,
der muß mit der Liebsten gehn,
es jubeln und lassen die andern
dem Fremden alleine stehn.

Was wisset ihr,dunkele Wipfel,
von der alten,schönen Zeit?
Ach,die Heimat hinter den Gipfeln,
wie liegt sie von hier so weit!

Am liebsten betracht' ich die Sterne,
die schienen,wie ich ging zu ihr,
die Nachtigall hör' ich so gerne,
sie sang vor der Liebsten Tür.

Der Morgen,das ist meine Freude!
Da steig' ich in stiller Stund'
auf den höchsten Berg in die Weite,
grüß dich,Deutschland,aus Herzensgrund!

異国を旅しようとする者は
恋人を連れて行くことだ
その地の人たちが楽しそうでも
よそ者は一人ぼっちなのだから

暗い梢よ、お前たちが知るはずもない
かつてのあの美しい日々を
ああ、あの峰の向こうの故郷は
ここからなんと遠いことか!

星空をじっと眺めるのが大好きだ
彼女のところに行くとき輝いていたから
ナイチンゲールの鳴き声を聞くのは嬉しい
恋人の戸口の前で歌っていたから

朝、それは僕の喜びだ!
辺りが寝静まっている間に木に登り
遥かに見えるあの一番高い山に向って
挨拶を送る、ドイツよ、心を込めて!


 アイヒェンドルフの小説『のらくら者』に含まれる詩で、語り手である主人公がイタリアを旅した時に、滞在した城の近くの山腹にある高い木の梢に登ってうたう歌です。それは父の水車小屋である旅の職人から習った古い歌ということになっています。故郷に対して「ドイツ」と呼びかけているのは、近代的ナショナリズムの表現として注目されるでしょう。しかしここで懐かしまれている故郷・ドイツとは、恋人のいる場所・国のことであるのは言うまでもありません。タイトルは普通「郷愁」と訳される語ですが、この詩の内容には「望郷」の方がふさわしいと思いこれにしました。
 ヴォルフの作曲は、アイヒェンドルフ歌曲集の中でも情緒豊かな曲として古くから親しまれている作品です。演奏は最後に熱く情熱をほとばしらせるプライが感動的。ただコンラート・リヒターとの録音ではピアノの後奏がもったいぶりすぎてちょっと残念です。

( 2005.09.18 甲斐貴也 )


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