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Die Zigeunerin    
  Gedichite von Eichendorff für eine Singstime und Klavier
ジプシーの娘  
     アイヒェンドルフ歌曲集

詩: アイヒェンドルフ (Josef Karl Benedikt von Eichendorff,1788-1857) ドイツ
    Gedichte - 1. Wanderlieder  Die Zigeunerin

曲: ヴォルフ (Hugo Wolf,1860-1903) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Am Kreuzweg da lausche ich,wenn die Stern'
und die Feuer im Walde verglommen,
und wo der erste Hund bellt von fern,
da wird mein Bräut'gam herkommen.
La,la,la,la,la,la,la,la,la.

“Und als der Tag graut',durch das Gehölz
sah ich eine Katze sich schlingen,
ich schoß ihr auf den nußbraunen Pelz,
wie tat die weitüber springen! -
Ha,ha,ha,ha,ha,ha,ha,ha!”

Schad' nur ums Pelzlein,du kriegst mich nit!
mein Schatz muß sein wie die andern:
braun und ein Stutzbart auf ung'rischen Schnitt
und ein fröhliches Herze zum Wandern.
La,la,la,la,la,la,la,la,la.

お星様と森のかがり火が消えかかり
犬の遠吠えが聞える頃
四つ辻で耳をすましているの
あたしの彼氏がやってくるから
ラーラーララララ・・・

「でな、夜明けに雑木林を通ったら
猫が一匹丸まってやがったんだ:
胡桃色の毛皮目当てにぶっ放すと
すっ飛んで逃げちまったよ!
ハハハハハハ・・・」

毛皮惜しかったね、あんたにはあたしだって捕まえられないよ!
あたしのいいひとはこんな風じゃなくちゃだめなのさ:
日に焼けて、ハンガリー風の短い髭で
楽しく旅の出来る人じゃなくっちゃね
ラーラーララララ・・・


 短編小説『詩人と仲間たち』”Dichter und ihre Gesellen” の挿入詩で、小説中では第一連と第三連を登場人物で美人女優のコルデルヒェン、第二連を主人公の若き詩人フォルトゥナートが歌っています。フォルトゥナートという名の詩人は小説「大理石像」の主人公にも使われていますが、「シュレッケンベルガー」「運任せの騎士」に出てくる運命の女神フォルトゥーナの男性形であるのが注目されます。小説「航海」の船もフォルトゥーナ号ですし、よほどお気に入りのモティーフのようです。
 歌曲はヴォルフ得意の、ミニオペラとでも言うべき情景描写に優れた作品。ジプシー娘の歌声や猟師の笑い声は原詩にはないものです。どうして娘が猟師に愛想を尽かすのかですが、猟師のセリフが浮気を示唆しているとも取れるでしょう。小説の中では、お色気たっぷりの美人と詩人が上機嫌で歌い交わすというシチュエーションです。
 この曲はシュヴァルツコップの十八番であったようで、見つけただけでも10種類近くの音盤がありました。デビュー当時、戦時中の放送録音に始まり、77年の引退公演のライブ録音まで歌手生活の全時期に渡って歌っており、フルトヴェングラーとの共演、ジェラルド・ムーアの引退公演などでも取り上げています。中でも優れていると思ったのは「ソング・ブック第1集」(エンジェル)に含まれている、唯一の正規スタジオ録音です(65年)。この細部まで計算しつくされた演出と、それを生かしきる歌の巧さは舌を巻くほどです。シュヴァルツコップ以外の歌手の録音は少ないようで、ベルナルダ・フィンク(英ハイペリオン)によるものしか聴くことができませんでした。過不足の無い水準以上の歌唱ですが、シュヴァルツコップの名人芸の前にはいささか影が薄いのも仕方ないでしょう。他にキルヒシュレーガーによる録音もあるようですが未聴です。
(2005.8.2/11.9改訂 甲斐貴也)

( 2005.11.09 甲斐貴也 )


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