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Death be not proud   Op.35-9  
  The Holy Sonnets of John Donne
死よ 驕るなかれ  
     ジョン・ダンの宗教的なソネット

詩: ダン (John Donne,1572-1631) イギリス
    Holy Sonnets 10 

曲: ブリテン (Edward Benjamin Britten,1913-1976) イギリス   歌詞言語: 英語


Death, be not proud, though some have called thee
Mighty and dreadful, for thou are not so;
For those whom thou think'st thou dost overthrow
Die not, poor Death, nor yet canst thou kill me.

From rest and sleep, which but thy pictures be,
Much pleasure; then from thee much more must flow,
And soonest our best men with thee do go,
Rest of their bones, and soul's delivery.

Thou'art slave to fate, chance, kings, and desperate men,
And dost with poison, war, and sickness dwell,
And poppy'or charms can make us sleep as well
And better than thy stroke; why swell'st thou then?

One short sleep past, we wake eternally
And death shall be no more; Death, thou shalt die.

死よ 威張るなよ 人がお前のことを
強くて怖いと言ってても お前はそれ程のもんじゃない
お前がやっつけたと思っている人たちにしても
死んではいないんだ。哀れなやつめ、お前はこの俺すら殺せはしない

お前と良く似ている休息や眠りからも
多くの喜びが溢れているのだ。だからお前からも、もっと、もっと喜びが得られよう
敬虔な人たちがお前と直ちに旅立とうというのも不思議ではない
お前が肉体を休め、魂を解放してくれるのだから

お前は運や偶然、王侯や絶望者の単なる奴隷
そして毒薬や戦争や病気と単に一緒に暮らしているだけだ
麻薬や魔法でも眠りは得られて
しかもお前の一撃よりも効果があるのだから、どうしてそんなに威張れるんだ?

つかの間の眠りが終われば 永遠の目覚めがやってくる
そして死は二度とやってこないんだ。死よ、お前がそのとき死ぬんだよ


冒頭の「死よ 驕るなかれ」のフレーズがガン患者の手記とかによく使われて有名なジョン・ダン(John Donne 1575-1631)のこの詩は、「聖なるソネット」ということで非常に宗教的なものです。最後の審判で永遠の命が与えられるのであれば、それまでのしばしの休息を与えてくれるだけの死など恐れるには足りない。と強い調子で歌われます。でも実は詩人は壮年期に重い病を得て死の恐怖と直面した過去を持っていたのでした。それを乗り越えるための信仰の力、というように見てみるとずいぶんと意味深長に読めませんでしょうか。
この詩にはイギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンが「ジョン・ダンの宗教的なソネット」という歌曲集の1曲としてメロディをつけています。宗教的、とあることからもお分かりのようにかなり渋い作品ですが、作曲者自身のピアノ伴奏にピーター・ピアーズのテノール独唱という極め付けの名演奏があります。ふつふつとたぎる(しかし決して爆発しない)熱気が素晴らしいです。
あとはラングリッジ(T)にベッドフォード(Pf)のNaxos盤か、ボストリッジ(T)にジョンソン(Pf)のHyperion盤という、これらもまたイギリス歌曲の名コンビの録音があります。そういった点では恵まれている曲であるとも言えましょう。

詩の訳は内容的にもあまり格調高く訳すとこの強い訴えかけが響いてこないような気がしましたのでちょっとくだけた感じで。ダン自身若いころは放埓な暮らしをしていたといいますし、こういうスタイルがあっても良いでしょう。でもこれでは「北斗の拳」のケンシロウの台詞にでもなりそうな感じですなあ。「おまえはもう死んでいる」とかいう感じ...
(英文学の先生から怒られそうではある。誰も見てないと思いますが...)

( 2005.08.20 藤井宏行 )


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