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ほしがりませんかつまでは    
 
 
    

詩: 山上武夫 (Yamagami Takeo,1917-1987) 日本
      

曲: 海沼實 (Kainuma Minoru,1909-1971) 日本   歌詞言語: 日本語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください


作詞:山上武夫&作曲:海沼実のコンビは、戦後の童謡復興において大変な活躍をされた人たちで、このコンビとして有名な作品には「おさるのかごや」や「みてござる」があります。その飄々としたユーモラスな童謡はもっと大事にされても良いように思うのですが、最近の子供番組ではもっとポップな歌が大事にされる傾向にあるのか、あまり聴けることもなくなってきました。もしかしたら団塊の世代から私くらいの世代までの懐メロ童謡(そんなジャンルあるのか???)になってしまいつつある音楽なのかも知れませんが。

その名コンビも、戦時中には国策に逆らった軟弱な歌を作ることは許されなかったのでしょうか。およそ彼らの資質には合わなさそうな童謡ですが、「ほしがりません かつまでは」という歌を残しています。
昭和17年12月の大東亜戦争開戦1周年記念日のために公募された「国民決意の標語」の入選作のひとつがこの有名な標語ですが、これを題材に作られた(作らされた?)のがこの歌です。
まなじりを決して「やるぞ倹約!!!」というような歌にしてしまうととんでもなく陰鬱なものになってしまいそうなところ、山上はこれに「ですます調」の柔らかい詞を、そして海沼もとても愛くるしいメロディをつけたので、聴いていてもとても不思議な音楽が出来上がりました。暗い(あるいはヒステリックな)音楽が溢れる中この曲はとても新鮮だったのでしょうか。けっこうヒットしたといわれています。
皮肉なことに、この曲のヒットのおかげでこの「欲しがりません勝つまでは」の標語が普及した、という側面もあるようなのですが...

1番:「どんな短い鉛筆も どんな小さい紙切れも 無駄にしないで使います」 資源問題がかまびすしい今でこそ大事にしたい考え方ですし、
2番:「靴や洋服新しく つくることより役に立つ 強いからだをつくります」 というのもそのとおり
3番で軍備増強のために貯金をしよう、というところとか4番で勝どきに上がる日の丸、という描写などは時代を感じさせますが、最後のサビの「欲しがりません 勝つまでを」を別のサビ、例えば「地球の資源を 大切に」とでも変えれば今でも立派に通用する子供の歌です。

彼らの精一杯のこだわりか、あるいは単に時流に乗るような音楽を作る器用さがなかったのか、とにかく戦時中の歌としては異彩を放っています。
海沼が戦後育てた児童合唱団「ゆりかご会」の録音でしみじみと聴いてみるのも良いのではないでしょうか(コロムビア)。

「そうです ぼくたち わたしたち
 ほしがりません かつまでは」

今幼稚園で歌われても全く違和感がない雰囲気がとにかく不思議です。戦争中にもこんな歌があったのですね。

( 2005.08.02 藤井宏行 )


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