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Who is Silvia?   Op.18-2  
  Let us garlands bring
シルヴィアって誰だ  
     花輪を捧げよう

詩: シェイクスピア (William Shakespeare,1564-1616) イングランド
    Two Gentlemen of Verona (ヴェローナのニ紳士) Act.4 Scene.2 Who is Silvia?

曲: フィンジ (Gerald Finzi,1901-1956) イギリス   歌詞言語: 英語


Who is Silvia? what is she,
That all our swains commend her?
Holy, fair and wise is she;
The heavens such grace did lend her,
That she might admired be.

Is she kind as she is fair?
For beauty lives with kindness.
Love doth to her eyes repair,
To help him of his blindness,
And being helped, inhabits there.

Then to Silvia let us sing,
That Silvia is excelling;
She excels each mortal thing
Upon the dull earth dwelling;
To her let us garlands bring.

シルヴィアって誰だ? どんな人だ
みんなが褒めたたえる彼女って?
清く、美しく、賢いのが彼女さ
天が彼女にそれらすべてを与えてくれた
だからみんなが憧れるんだ

きれいなだけでなく優しいのかい?
美しさが優しさと同居しているから
愛の神が彼女の瞳へとやってくるのさ
見えない目を癒そうとして
それで治っても、そのままそこに居ついてしまうほどだ

だからシルヴィアに歌を捧げよう
彼女は素晴らしい人だと
彼女は誰よりも優れている
この地上に住んでいる誰よりも
さあ彼女に花束を捧げようよ


ドイツ語に訳された詩でシューベルトが作曲した「シルヴィアに」という歌曲が有名ですが、元はシェイクスピアの喜劇「ヴェローナのニ紳士」の第4幕第2場、横恋慕のために親友を裏切ったプローテュースが、その恋する大公の娘シルヴィアを堕とそうと仕掛ける罠で歌われる歌です(話はもう少し複雑で、彼女には意に染まない許婚のシューリオというのがいるのですが、このシューリオが楽師たちを雇って歌うのがこのセレナーデ。この歌のあとにシューリオの代理人として彼女を口説く役割をするのがこのプローテュースです。もっともその立場を利用してシューリオそっちのけで自分を売り込むのですが厳しく拒絶されます。まあ当然か)
一目ぼれしてしまったら、親友を捨て、昔の恋人を棄て、名誉も何もかも捨ててしまった男に「紳士」とつけるのは凄く皮肉なところがあるように思いますが、こいつは最後は裏切った友にもあっさり許され、元の恋人(男装して彼のお小姓になっていた)にももう一度惚れ直してめでたしめでたしの話になっていますので、これは戯曲を読んでいてもかなりフラストレーションが溜まります。こんなヤツもっとヒドイ目に遭えば良いのに、と思うのは決して私だけではないはず。そんなこんなであまり上演されることもないシェークスピア劇になっているような感もありますけれど。

さてこの曲、シューベルトだけでなく本家本元のイギリスでも、他のシェイクスピア戯曲作品中のうた同様に非常に多くの作曲家が曲を付けています。そこで今回は今まで取り上げていない作曲家の中からイギリス歌曲を語る上では外せない人のひとり、ジェラルド・フィンジ(フィンツィ)の付けた曲を取り上げましょう。彼は他のイギリスの作曲家同様、このシェークスピアやテニスン、ハーディーといった英国の有名な詩人の作品に曲を付けています。この人の歌曲の特徴は、詩のテキストを深く読み込み、言葉の味わいを最大限に生かした繊細な歌を書いているところで、譬えは適切ではないかも知れませんがイギリスのフーゴ・ヴォルフというように私は思っています。イギリスの詩人を愛する方はぜひこのフィンジの歌曲を探訪されると良いのでは?
特にトマス・ハーディーの詩につけた歌曲がたくさんあり、言葉の美しさとしみじみとしたメロディーが味わい深いです。ハーディーの詩は私はまだ全く不案内の世界なので、いずれフィンジのそれらの曲と一緒にじっくり探訪させていただくこととして、ここではシェイクスピアです。
この「シルヴィアに」は、シェークスピアの戯曲から5編を取り上げて歌にしている「花輪を捧げよう」の第2曲です。この曲も、基本的な雰囲気はシューベルトの同名の曲に通じるものがありますが、もう少し軽快な感じ。彼女のエレガンスを讃える第2節がしっとりとした感じでとても奇麗ですが、また第3節で冒頭の伸びやかな旋律が帰ってきます。

歌曲集のタイトルである「花輪を捧げよう」は、この詩の一番最後のフレーズを取ってきたものです。

「花輪を捧げよう」、有名な割には意外と録音が少ないのですが、入手しやすい名唱としてブリン・ターフェルのもの(DG)がありますのでぜひ全曲聴いてみてください。ちょっと柄が大きすぎるような気もしないではないですけれども。
今まで聴いた中で絶品だったのはイギリスの大御所メゾ、ジャネット・ベイカーが歌ったもの。彼女のイギリス歌曲は巡り合わせが悪いのか私はほとんど聴いたことがないのですが、やっぱり格が違います。第3節で冒頭の素敵なメロディが戻ってくるところなんかゾクゾクしてしまいました。

( 2005.07.01 藤井宏行 )


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