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ひめゆりの塔    
 
 
    

詩: 西条八十 (Saijyou Yaso,1892-1970) 日本
      

曲: 古関裕而 (Koseki Yuji,1909-1989) 日本   歌詞言語: 日本語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください


沖縄での壮絶な地上戦からちょうど60年、挺身隊として駆り出されてその多くが悲劇的な死を遂げた女学生たち「ひめゆり部隊」のことが今年、とても不幸な形のニュースで再び知られることになってしまいました。
確かに60年も経ち人々の記憶から薄れ、特にそういう体験をしたひとを近親者に持たない若い人には遠い世界のことになってしまったのでしょう。私もできればこういう悲惨なことからは目をそむけておきたいという気持ちは正直ありますし、実体験者から次の世代に語り継げる程に話を聴いていない...

さて、この悲しい沖縄戦のエピソード「ひめゆり部隊」ですが、まだ沖縄が日本復帰前の早くも昭和28年、今井正監督の東映映画として津島恵子・岡田英次といった人たちの主演で映画化されています。その映画の主題歌を作ったのが、詞:西条八十・曲:古関裕而、そして歌が伊藤久男という人たちでした。いずれも大戦前から活躍し、戦時中は軍歌・戦時歌謡の多くを作り、歌った人ですが、戦後もこんな形で名作・名唱をこれに限らずいくつも残してくれました。「転向した」などという浅薄なことをいう人もいるようですが、どの時代でも人の心をしっかりと捉える歌を紡ぎ出してきたからこそ、戦後もこんな曲を含め素晴らしいものが多いのだと思います。
典型的な戦時歌謡と言われる「暁に祈る」(詞は野村俊夫ですが、曲は古関、そして歌ったのは伊藤久男です)とこの「ひめゆりの塔」を色眼鏡なしに聴き比べてみてください。胸を打つ戦争の悲しみはどちらにも色濃く流れていると思います。

ソプラノの藍川由美さんがそんな古関作品を分け隔てなく取り上げ、紹介してくれているのは大変素晴らしいことです。この「ひめゆりの塔」は第1集に収録されています。オリジナルの伊藤久男の歌ほど濃厚ではないですが(まあ彼以上に濃厚に歌を歌える人はそうそういない...)、かわりに花岡千春さんのピアノ伴奏と共に繊細な美しさに溢れています。こんな風に淡々と歌うのもまた味があるかと(3番だけ少しテンポを落としてひめゆり達の鎮魂をじっくりと歌いますが)。下手に情感を込めすぎるよりも悲しみが引き立ちます。

詞は残念ながら紹介できないのですが、第1番は挺身隊への出発の朝の情景、第2番は戦火の中燃える故郷の町、そして第3番は死した彼女たちの慰霊碑の寂しげに立つ情景を歌っています。

ひめゆりの唄は沖縄オリジナルの別の曲もありますので、もう少し聞き込んだらご紹介したいと思います。

( 2005.06.25 藤井宏行 )


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