みずいろの風よ 大手拓次の三つの詩 |
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かぜよ、 松林(しょうりん)をぬけてくる 五月の風よ、 うすみどりの風よ、 そよかぜよ、そよかぜよ、ねむりの風よ、 わたしの髪をなよなよとする風よ、 わたしの手を 私の足を そして夢におぼれるわたしの心を みずいろの ひかりのなかに 覚まさせる風よ、 かなしみとさびしさを ひとつひとつ消してゆく風よ、 やわらかい うまれたばかりの銀色の風よ、 かぜよ、かぜよ、 かろくうずまく さやさやとした海辺の風よ、 風はおまえの手のように しろく つめたく 薔薇の花びらのかげのように ふくよかに ゆれている ゆれている、 わたしの あはいまどろみにうえに。 |
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( 2017.12.29 藤井宏行 )