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Sehnsucht   Op.3-2  
  5 Lieder
憧れ  
     5つの歌曲

詩: ゲーテ (Johann Wolfgang von Goethe,1749-1832) ドイツ
      Sehnsucht (1802)

曲: ヴォルフ (Hugo Wolf,1860-1903) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Was zieht mir das Herz so?
Was zieht mich hinaus?
Und windet und schraubt mich
Aus Zimmer und Haus?
Wie dort sich die Wolken
Um Felsen verziehn!
Da möcht' ich hinüber,
Da möcht' ich wohl hin!

Nun wiegt sich der Raben
Geselliger Flug;
Ich mische mich drunter
Und folge dem Zug.
Und Berg und Gemäuer
Umfittigen wir,
Sie weilet da drunten,
Ich spähe nach ihr.

Da kommt sie und wandelt;
Ich eile sobald,
Ein singender Vogel,
Zum buschichten Wald.
Sie weilet und horchet
Und lächelt mit sich:
“Er singt es so lieblich
Und singt es an mich.”

Die scheidende Sonne
Verguldet die Höhn;
Die sinnende Schöne
Sie läßt es geschehn.
Sie wandelt am Bache,
Die Wiesen entlang,
Und finstrer und finstrer
Umschlingt sich der Gang.

Auf einmal erschein' ich
Ein blinkender Stern.
“Was glänzet da droben,
So nah und so fern?”
Und hast du mit Staunen
Das Leuchten erblickt;
Ich lieg' dir zu Füßen,
Da bin ich beglückt!

これほど私の心を惹きつけるのは何?
何が私を外に連れ出すのか?
私にぐるぐる絡み付き、
部屋から家から連れ去ろうとするのは?
雲が、あそこの
岩山のあたりで消えていく!
あそこに行ってみたい、
行きたくてたまらないのだ!

今、鴉の群れが
ゆらゆらと飛んでいる。
私はその群れに加わり、
列の後を追って行く。
山超え、壁越え、
飛んで行く。
すると、下に彼女が居り、
私はそちらをそっと窺う。

彼女はやって来て、あたりをぶらつく。
途端に私は大急ぎで
歌う鳥となって、
生い茂る森へと向かう。
彼女はそこで耳を澄ませ、
独り微笑む。
「あの鳥はあんなに素敵に歌っている。
私に向かって歌っているのね。」

沈み行く太陽が
丘を金に染める。
思いに沈む、麗しき彼女は
その場に身を委ねる。
彼女は小川のほとりをぶらつき、
草地に沿って歩く。
そのうち、徐々に暗さが増し、
足元をおぼつかなくさせる。

その時、突然私は
きらめく星となる。
「あの上空で
あんなに近く、遠く、輝いているのは何かしら?」
そして、君が驚いて
その光を認めると、
私は君の足元にひれ伏す。
それで私は幸せなのだ!


この曲はヴォルフの「Op.3」の第2曲にあたり、第1曲同様1875年8月以前、ヴォルフ15歳の作品である。
このゲーテの詩には変形有節形式のベートーヴェン(Op. 83-2 : 1810年作曲、1811年出版)や通作形式のシューベルト(D. 123 : 1814年作曲、1842年出版)などの曲があるが、若きヴォルフは偉大な先輩たちに挑戦しようとしたのかもしれない。
ヴォルフはAllegretto、八分の六拍子の純粋な有節歌曲(ホ長調)として作曲したが、自筆楽譜では歌声部の下に第1・2節のテクストがコンマなどの記号抜きで記され、楽譜の最後の空きスペースに第3・4節のテクストが記号を伴って単独で記されているが、第5節のテクストが記されていないため、ヴィーン音楽学出版社(Musikwissenschaftlicher Verlag Wien)のヴォルフ全集7-3巻(1976年出版)では4節の有節歌曲として扱っている。しかし、自筆譜では繰り返し記号に5番括弧があるので、第5節も歌われることを想定していたことは明らかである(実際、自筆楽譜は第4節まで書いたところでテクストを書くスペースがなくなっているので、書きたくても書けなかったということではないかと思われる)。
詩の内容から考えても第4節で終わるのは中途半端である。
上に記した原詩の第3・4節はヴォルフ自身によって記号(コンマなど)も書かれているので、それに合わせた(ほぼゲーテの原詩に沿っている)。
ヴォルフの曲は「Op.3」の5曲中、最も魅力的に思える。優しく慰撫するような歌は聴く者を惹きつけてやまない。
途中、流れる旋律を中断するかのような八分休符が挿入されている部分があるが(3行目の「schraubt」と「mich」の間と、5行目の「dort」と「sich」の間)、若きヴォルフなりの詩へのこだわりの萌芽と見てもいいだろう(第2節以降には当てはまらないが)。
ピアノの右手は十六分音符、左手は八分音符の分散和音だが、後奏の右手で大きな跳躍で徐々に高音に上がっていく箇所は聴いている人には美しい効果を感じさせるが、演奏者泣かせではあるだろう(このへんに当時のヴォルフの発展途上さが顔を出している)。

この曲も今のところ録音は無いようだが、ピアニストの松川儒(まなぶ)のヴォルフ歌曲全曲プロジェクトで韓国のバリトン、ロッキー・チョンLocky Chungが歌っていた(2004年10月26日、浜離宮朝日ホール)。彼らの爽やかな表現がこの若書きの作品に生命力を吹き込んでいる場に立ち会えて幸せだった(第4節までしか歌われなかったのは全集楽譜に従ったのであろう)。

( 2005.06.19 フランツ・ペーター )


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