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Nell   Op.18  
  Trois mélodies
ネル  
     3つのメロディ

詩: ルコント・ド=リル (Charles-Marie-René Leconte de Lisle,1818-1894) フランス
    Poèmes antiques - Chansons écossaises  Scottish Songs

曲: フォーレ (Gabriel Fauré,1845-1924) フランス   歌詞言語: フランス語


Ta rose de pourpre à ton clair soleil,
Ô Juin. Étincelle enivrée,
Penche aussi vers moi ta coupe dorée:
Mon coeur à ta rose est pareil.

Sous le mol abri de la feuille ombreuse
Monte un soupir de volupté:
Plus d'un ramier chante au bois écarté.
Ô mon coeur,sa plainte amoureuse.

Que ta perle est douce au ciel enflammé.
Étoile de la nuit pensive!
Mais combien plus douce est la clarté vive
Qui rayonne en mon coeur,en mon coeur charmé!

La chantante mer. Le long du rivage,
Taira son murmure éternel,
Avant qu'en mon coeur,chère amour.
Ô Nell,ne fleurisse plus ton image!

きみは赤いばら、明るい日の光を受けて
ああ この六月に、酔いしれるように弾けて咲く
ぼくにも分けてくれ きみの黄金の輝きを
ぼくの心も きみのようなばらと同じなのだ

陽射しを遮る木の葉に守られながら
喜びの吐息が立ちのぼる
山鳩が数羽 人里離れた森で歌ってる
おお ぼくの心と同じ愛の嘆きを

きみは真珠、炎のように燃える空にきらめく
物思いに沈む夜に輝く星
なんてその輝きは美しいんだ
ぼくの魅せられた心を照らしてくれる

岸辺で歌う海のざわめきも
永遠に歌うことをやめるだろう
ネルよ、もしきみがぼくの心の中で
花と輝かなくなることがあるとすれば


時は6月、バラの花の季節の始まりですね。6月の花嫁(ジューン・ブライド)なんて言葉もあるとおり、梅雨のないヨーロッパでは最高に爽やかな恋の季節なのでしょう。
フランスの詩人ルコント・ド・リルがスコットランドの詩人&ソングライター、ロバート・バーンズにインスピレーションを受けて、この6月のバラを題材に書いたとてもロマンティックな詩。これに弾けるような熱い恋歌のメロディーを付けたのがガブリエル・フォーレの初期の傑作歌曲です。訳していても赤面してしまうくらいクサイ言葉の連発ですが、フランスの高踏派たちの詩というのはこんな感じでくどいくらいに大仰に訳すとなんだか味わいがありますね。

とても美しい曲なので男女ともによく歌われるようですが、やはりこれは男心の歌です。
(アメリンクの歌や、古いところではニノン・ヴァランなんかも捨てがたい美しさですが)
初めてこれを聴いたのがカミーユ・モラーヌの美しいハイバリトンなので、私ももういいおっさんなんですけれど未だにこれを聴くとときめきます。軽やかなテノールの声がとても似合いそうな曲なのですが、これは残念ながらまだ聴いたことがありません。

恐らくこの詩の元となったと思われるバーンズの詩はこちらです。
これとは別に”Handsome Nell(りりしいネル)”というネルという名前がそのものズバリの詩もありましたが、内容的にはこちらの方がフォーレの歌になったルコント・ド=リルのものに近いような感じがしましたのでこちらだけ取り上げます。

A Red,Red Rose
        by Robert Burns

 My love is like a red,red rose
 That's newly sprung in June:
 My love is like the melody
 That's sweetly played in tune.

 As fair art thou,my bonnie lass,
 So deep in love am I:
 And I will love thee still,my dear,
 Till all the seas gang dry.

 Till all the seas gang dry my dear,
 And the rocks melt with the sun:
 And I will love thee still,my dear,
 While the sands of life shall run.

 And fare thee well,my only love,
 And fare thee well a while!
 And I will come again,my love,
 Though it were ten thousand mile.

赤い、赤いバラ
         ロバート・バーンズ

 ぼくの恋人は 赤い、赤いバラの花
 それは6月に新たにはじけるんだ
 ぼくの恋人はメロディのよう
 それはやさしく奏でられるんだ
 
 きみが綺麗だから、ぼくの可愛い少女よ
 とっても深い愛の中にぼくはいるんだ
 そしてきみをずっと愛し続けよう、ぼくの愛しい人
 すべての海が涸れ果てるまで

 すべての海が涸れ果てて、ぼくの愛しい人よ
 そして太陽で岩が溶かされるまで
 きみをずっと愛するんだ、ぼくの愛しい人よ
 命の砂が落ち続ける限り

 そしてさよなら、ぼくがただ一人愛する人
 さよなら、ほんの少しの間だけね!
 ぼくはまた戻ってくるよ、愛する人よ
 たとえそれが何千マイルの彼方からでも

( 2005.06.15 藤井宏行 )


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