Le Mal Univers de Rimbaud |
悪 ランボーの宇宙 |
Tandis que les crachats rouges de la mitraille Sifflent tout le jour par l'infini du ciel bleu; Qu'écarlates ou verts,près du Roi qui les raille, Croulent les bataillons en masse dans le feu; Tandis qu'une folie épouvantable broie Et fait de cent milliers d'hommes un tas fumant; -Pauvres morts! dans l'été dans l'herbe,dans ta joie, Nature! ô toi qui fis ces hommes saintement!... -Il est un Dieu,qui rit aux nappes damassées Des autels,à l'encens,aux grands calices d'or; Qui dans le bercement des hosannah s'endort, Et se réveille,quand des mères,ramassées Dans l'angoisse,et pleurant sous leur vieux bonnet noir, Lui donnent un gros sou lié dans leur mouchoir! |
絶え間なく吐き出される赤い 唾液のような銃弾が 一日中青空の下でうなりをあげている 面白がって眺めている王の前で 赤い服や緑の服の兵隊たちが 砲火の中どっと斃れ伏している 恐るべき狂気が打ち砕いてく 十万もの人々を硝煙立つ屍の山に変えてしまう -哀れな死者たちよ! 大自然の喜び溢れる夏草の中に埋もれていく おい自然よ! お前は人間を聖なるものとして生み出したのじゃなかったか! こんなときに神様はといえば、綾織のテーブルクロスに 香を焚いた金ピカの聖餐杯に囲まれながらニヤケて 賛美歌を子守唄に居眠りをしているのだ 目覚めるのはといえば 死んだ兵士たちの母が 苦しみに打ちひしがれ 古びた黒い帽子の下で泣きながら ハンカチに包んだお賽銭を捧げる時だけなのだ |
訳詩集によっては「戦禍」、あるいは「禍々しきもの」といったタイトルになっていることがありますが、この詩の湧き上がってくるような怒りを表すにはやはりタイトルは簡潔に「悪」としてみました。お賽銭だけ貰ってヌクヌクと贅沢している「神様」の描写は結構強烈です。
まあ神様が悪いのではなくて、それを奉る宗教団体がこんな風になってしまうのは洋の東西を問わずよくある話。原詩の毒が私の訳ではちょっと出し切れなかったところがあります。ぜひ金子光晴の名訳でご覧下さい。
(堀口大学・粟津則雄などいろんな方が訳しておられる詩ですが、金子氏のものが私には一番鮮烈でした)
赤はフランス兵の、緑はプロシャ(ドイツ)兵のズボンの色なのだそうで、両軍がむざむざと機関銃の餌食になっている情景、これも夏の生命力溢れる自然の中で人間だけがたくさん死んで転がっている、というコントラストの描写はどうでしょう。想像するだに非常に怖い光景がそこには広がっています。
オランダの作曲家ルドルフ・エッシャーがそこにつけた音楽は、打楽器の鮮烈な響きが軍靴の響きを感じさせるような重々しいもの。現代音楽ですからメロディの美しさはないですが、この詩には流麗な音楽は必要ないでしょう。
( 2005.06.24 藤井宏行 )