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Gather ye rosebuds while ye may    
 
バラのつぼみは集められる時に集めよ  
    

詩: へリック (Robert Herrick,1591-1674) イギリス
      To the virgins,to make much of time

曲: ローズ (William Lawes,1602-1645) イギリス   歌詞言語: 英語


Gather ye rosebuds while ye may,
Old time is still a-flying;
And this same flower that smiles today,
Tomorrow will be dying.

The glorious lamp of heaven, the sun,
The higher he's a-getting,
The sooner will his race be run,
The nearer he's to setting.

That age is best which is the first,
When youth and blood are warmer;
But being spent, the worse, and worst
Times still succeed the former.

Then be not coy, but use your time,
And while ye may, go marry,
For having lost but once your prime,
You may forever tarry.

バラのつぼみは集められる時に集めよ
時間は矢のように過ぎ去るのだから
今日微笑んでいたその花が
明日には枯れているのだから

天の輝く明かり、太陽も
より天高く昇れば昇るほど
その旅はより早く過ぎて
やがて沈むことになるのだ

人生は初めの時が最も良く
若さと血がたぎっている
だがそれが過ぎれば あとは悪くなるばかり
そして最悪のときがくる

だから恥ずかしがらず その時を生きよ
行けるうちに結婚しなさい
ただ一度の盛りを過ぎれば
一生待つことになるのだから


最後の節を見て最近の女性の方は「余計なお世話だわ」と思われるかも知れませんが(男でもそうかも)、まあ17世紀の詩人にツッコんでも仕方がないのですから、気持ちを鎮めてこの古典詩をじっくり味わうこととしましょう。この詩は冒頭の「バラのつぼみは」の部分が英語のことわざになっているほど有名で、89年の映画「今を生きる」の中でもロビン・ウイリアムス演じる型破りな教師が、管理教育に悩む若者たちに語って聞かせる効果的な使われ方をしました。またこの詩のタイトルは正式には”To the virgins, to make much of time”(乙女よ、時を大切にせよ)というもので、吉井勇の歌詞でヒットした「命短し恋せよ乙女」の中山晋平・ゴンドラの歌もこの詩が元歌になっているという説があります。確かにへリックの詩ほどあからさまじゃないですけれど、これも言ってることは同じですね。

(なおイタリアの古典詩人アンジェロ・ポリツィアーノの詩「バッカスの歌」が元だという説やアンデルセンの「即興詩人」を森鴎外が訳したものが元だという説もあるようです。塩野七生さんなどが唱えているイタリア説は原詩を確認できていませんので言及しておくのみですが、鴎外訳のアンデルセンはこんな感じです

   朱の唇に触れよ、誰か汝の明日猶在るを知らん。
   恋せよ、汝の心の猶少なく、汝の血の猶熱き間に
               アンデルセン「即興詩人」よりヴェニスの小唄(森鴎外訳)

うーん、やはりこっちが正解かな。皆さんいかが思われます?)

さて、このへリックの詩には詩人と同時代の作曲家、ウイリアム・ローズがメロディをつけています。古楽がお好きな方には17世紀のイギリスリュート音楽の大物としておなじみの作曲家ではないかと思いますが、残念ながら私はあまり詳しくないので深くは語れないです。リュート伴奏の歌曲もいくつか残しているようでその中の1つがこれなのだそうで、この曲はルネ・ヤーコブスのカウンターテナーに佐藤豊彦のリュート伴奏というなかなか凄い競演の演奏を聴くことができました。このうたは詞の言葉を含めて不思議な響きで、ダウランドより新しい作品のはずなのですが私の耳にはもっと古い音楽のように聴こえました。

( 2005.06.10 藤井宏行 )


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