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Antike Poesie (An Goethe)   Op.62-21  
  Das Holdes Bescheiden
古典文芸(ゲーテに)  
     歌曲集「善き慎み」

詩: メーリケ (Eduard Friedrich Mörike,1804-1875) ドイツ
    Gedichte  Antike Poesie

曲: シェック (Othmar Schoeck,1886-1957) スイス   歌詞言語: ドイツ語


Ich sah den Helikon in Wolkendunst,
Nur kaum berührt vom ersten Sonnenstrahle:
Schau! jetzo stehen hoch mit einem Male
Die Gipfel dort in Morgenrötebrunst.

Hier unten spricht von keuscher Musen Gunst
Der heilge Quell im dunkelgrünen Tale;
Wer aber schöpft mit reiner Opferschale,
Wie einst,den echten Tau der alten Kunst?

Wie? soll ich endlich keinen Meister sehn?
Will keiner mehr den alten Lorbeer pflücken?
-Da sah ich Iphigeniens Dichter stehn:

Er ist's,an dessen Blick sich diese Höhn
So zauberhaft,so sonnewarm erquicken.
Er geht,und frostig rauhe Lüfte wehn.

ヘリコン山には雲が垂れこめ
一日の最初の陽光もほとんど届かずにいる:
見よ! 今その頂は再び高々と
朝焼けの燃える中に聳え立った

その麓では深緑の谷の聖なる泉が
慎み深い詩神の恩寵を物語る
だが誰が穢れなき供犠の器で
昔のように古の芸術の真髄を汲むのだ?

ついにただ一人の巨匠にも相まみえぬのか?
古の月桂樹を摘む者はもういないのか?
・・・その時 イフェゲーニアの詩人が姿を現した:

その人こそは その眼差しで芸術の高みを
魔法のように 暖かい陽のように蘇らせる
彼が去れば 凍てつく曇に閉ざされる


註)
ヘリコン山:ギリシアのボイオティアの山。ギリシャ神話ではアポロンとミューズが住む山とされる。
聖なる泉:ヘリコン山の麓にあり、詩の霊感を生み出すというヒッポクレーネーの泉のこと。
イフェゲーニアの詩人:戯曲『タウリス島のイフィゲーニエ』はゲーテが古典主義を確立した作品。


 メーリケが古典主義者としてのゲーテを讃えた詩。メーリケ詩によく見られる4+4+3+3行のソネットの形式ですが、メーリケがこの形式を採用したのはこれが最初とされます。
 シェックの作曲は巨匠への畏敬と感動、そして最終行におけるゲーテ亡き後の不毛を嘆く詩に忠実に付曲しています。メーリケの原詩にゲーテの名は出てきませんが、シェックの楽譜のタイトルにはカッコつきでその名が記されています。演奏は大物による二種の全集のみ。

( 2005.05.29 甲斐貴也 )


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