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Hard Times Come Again No More    
 
厳しき時代よ,もう二度と来ないで  
    

詩: フォスター (Stephen Collins Foster,1826-1864) アメリカ
      

曲: フォスター (Stephen Collins Foster,1826-1864) アメリカ   歌詞言語: 英語


Let us pause in life's pleasures and count its many tears,
While we all sup sorrow with the poor;
There's a song that will linger forever in our ears;
Oh Hard times come again no more.

(Chorus)
Tis the song,the sigh of the weary,
Hard Times,hard times,come again no more
Many days you have lingered around my cabin door;
Oh hard times come again no more.


While we seek mirth and beauty and music light and gay,
There are frail forms fainting at the door;
Though their voices are silent,their pleading looks will say
Oh hard times come again no more.

(Chorus)
Tis the song,the sigh of the weary,
Hard Times,hard times,come again no more
Many days you have lingered around my cabin door;
Oh hard times come again no more.


There's a pale drooping maiden who toils her life away,
With a worn heart whose better days are o'er:
Though her voice would be merry,'tis sighing all the day,
Oh hard times come again no more.

(Chorus)
Tis the song,the sigh of the weary,
Hard Times,hard times,come again no more
Many days you have lingered around my cabin door;
Oh hard times come again no more.


Tis a sigh that is wafted across the troubled wave,
Tis a wail that is heard upon the shore
Tis a dirge that is murmured around the lowly grave
Oh hard times come again no more.

(Chorus)
Tis the song,the sigh of the weary,
Hard Times,hard times,come again no more
Many days you have lingered around my cabin door;
Oh hard times come again no more.

人生の喜びに安らぎ,人生の涙を数えよう
われらが不幸な者達と悲しみを分け合うときには
そこにはずっと耳に残っているひとつの歌があるのだ
「おお,厳しき時代よ,もう二度と来ないで」と

 (合唱)
 それがこの歌だ,疲れ果てた溜息の歌
「厳しき時代よ,厳しき時代よ,もう二度と来ないで
 ずっと長いこと,おまえは小屋の戸口に粘ってきたが
 おお,厳しき時代よ,もう二度と来ないで」


陽気なものや美しいもの,楽しく明るい音楽を探してみても
それらの姿は戸口の前ではかなく消え入るのみ
でも声は聞こえないが、それらは姿で訴えかける
「おお,厳しき時代よ,もう二度と来ないで」と

(合唱)
 それがこの歌だ,疲れ果てた溜息の歌
「厳しき時代よ,厳しき時代よ,もう二度と来ないで
 ずっと長いこと,おまえは小屋の戸口に粘ってきたが
 おお,厳しき時代よ,もう二度と来ないで」


人生に苦しむ,青ざめた伏目がちの乙女がいる
楽しき日は過ぎ去り、擦り切れた心が残る
彼女の声は明るく聞こえても、それは日がなの溜息だ
「おお,厳しき時代よ,もう二度と来ないで」と

(合唱)
 それがこの歌だ,疲れ果てた溜息の歌
「厳しき時代よ,厳しき時代よ,もう二度と来ないで
 ずっと長いこと,おまえは小屋の戸口に粘ってきたが
 おお,厳しき時代よ,もう二度と来ないで」


それは争いの波間を漂う溜息
それは浜辺に聞こえる嘆きの声
それは墓石のまわりでささやかれる哀歌
「おお,厳しき時代よ,もう二度と来ないで」と

(合唱)
 それがこの歌だ,疲れ果てた溜息の歌
「厳しき時代よ,厳しき時代よ,もう二度と来ないで
 ずっと長いこと,おまえは小屋の戸口に粘ってきたが
 おお,厳しき時代よ,もう二度と来ないで」



1854年の作品ですから作られたのは南北戦争よりも少し前、でもこの悲しい戦いの結末をしみじみと噛み締めるのにこれほど打ってつけの美しい歌はないでしょう。実際この曲は南北戦争関連の歌を収録したアルバムにはよく収められています。
フォスターの作品の中でも発表時からかなりヒットしていた曲のようで、そんなことから戦争当時の人達も「この厳しいいくさの時代よ、早く終わってくれ」という願いを込めて愛唱していたのかも知れません。メロディは決して悲しくはないのですが、聴いているととても切なくなります。

ボブ・ディランや矢野顕子といった人達も吹き込んでいる意外な人気曲ですが、やはりここではトラディショナルな形に近い録音として、トーマス・ハンプソンがカントリーバンドと共に入れているEMIの録音がアイリッシュミュージックのようにゆったりしたテンポで美しく歌われていてお勧めです。フォスター時代のスタイルを再現したという点ではNonsuchにある、デガエタニのメゾに合唱を交えて歌っているものも19世紀の古いハモンドオルガンの響き共々興味深いのですが、こちらは現在出ているCD「フォスターの夜会」には収録されていないようで残念です。

非常に面白い取り合わせとしては、沖縄の伝統的な歌を色々吹き込んでいる我如古(がねこ)より子さんが三線を弾きながら、ギターの吉川忠英さんと組んでいれた「唄遊び」というアルバムに収められているもの。原詩とは必ずしも関係のない詩が日本語で付けられていますが、日本国内で唯一太平洋戦争で戦場になり、そして戦後もアメリカ軍が駐留し未だに戦争の影を引き摺っている沖縄の人たちのやるせない悲しみを伝えるにはこの曲はとても良く合っているように感じます。三線の訥々とした響きがこれほどフォスターのメロディに合うというのも意外なことでした。吉川さんのきれいなアコースティックギターとの溶け合う響きも素敵です。
どちらかというとクラシック系の人よりも、カントリーやフォーク界の人により愛されている曲のようですね。でもそれだけにいろんな人の多彩な解釈が楽しめて面白い曲でもあります。

( 2005.03.26 藤井宏行 )


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