Plenivshis’ rozoj,solovej Op.2-2 Chetyre romansa |
バラに魅せられたナイチンゲール 4つのロマンス |
Plenivshis’ rozoj,solovej I den’,i noch’ poet nad nej, No roza molcha pesnjam vnemlet... Na lire tak pevets inoj Poet dlja devy molodoj; A deva milaja ne znaet, Komu poet i otchego Pechal’ny pesni tak ego? Ah! |
バラに魅せられたナイチンゲールは 夜も昼も花のそばで歌う でもバラはだまってその歌を聴くだけ 竪琴をひきつつ同じように歌う ある詩人が若い乙女のために だが可愛い乙女には分からない 誰のために歌っているのか そしてなぜ 歌がそんなに悲しいのかが ああ! |
副題に「オリエンタルのロマンス」とあり、こちらの方が有名な題名かも知れませんが、リムスキー・コルサコフの書いた初期の傑作です。オリエンタリズム溢れるひそやかな前奏から、歌はロシア民謡風の美しいメロディ、最後はアラビア風のヴォカリーズで消え入るように終わります。
甲斐さんの「自然ギャラリー」での特集で解説があるとおり、まさに東方のバラとナイチンゲールとの悲しい愛の物語の情景そのまま、これって西欧を経由してロシアに入ってきたんですかね?
もっとも、イスラム教神秘思想(スーフィズム)の中で「バラとナイチンゲール」というのは重要な役割を果たしている(バラは神の言葉、夜鶯は魂の比喩)という話をどこかで読んだことがありますのでそちらの方から伝わったのかも知れません。
面白いことに、この曲にはロシア以外の往年の名歌手の録音が結構あります。ロシアの歌曲というと言葉の壁があってあまり西欧の歌手が取り上げることはないのですが、この曲は例外です。
ソプラノのローザ・ポンセルやリリー・ポンス、興味深い取り合わせでは甘い声のテナー、ティト・スキーパなど。木管を重視したオーケストレーションがきらめく中、とろけるような美声がロシアとも中近東ともつかない美しいメロディで紡ぎ出されるのは結構面白い聴きものです。
ロシア系の歌手では、まずヴィシネフスカヤの美しい声、あるいはスラヴァのカウンターテナーのひそやかな歌などが聴き物でしょうか。そうは言いつつも最近のロシアの歌手たちの歌を聴く機会が私はずいぶん減っていますのでその気で探せばまだまだ素敵な歌に出会うことができるかも
( 2005.02.19 藤井宏行 )