萬葉千聲 |
何万もの葉の音は |
別後不知君遠近。觸目淒涼多少悶。 漸行漸遠漸無書,水闊魚沈何處問。 夜深風竹敲秋韻。萬葉千聲皆是恨。 故欹單枕夢中尋,夢又不成燈又燼。 |
別れたあと君はどこにいるのだろうか。独り寂しさに憂い悶えるばかり。 君はだんだん遠ざかり、まるで広い海に沈んだ一匹の魚を探すかのようだ。 夜も更け風が竹を鳴らし秋の音が響く。何万もの葉の音はまるで嘆きのようだ。 枕にもたれ夢の中君を尋ねたいのに、夢見ることもかなわぬうちに灯りも尽きた。 |
以前掲示板を訪問してくださったテレサ・テン(ケ麗君)のファンの方が教えてくださった、彼女が宗時代の詞に作曲された歌を歌ったレコード『淡淡幽情』からの曲です。マーラーの『大地の歌』の対訳を作ってから、漢詩にも興味が出てきたところで思い出し、ネットで探して購入たところ予想以上の素晴らしさに感激してしまいました。以前活躍していた中国系の歌謡曲歌手というぐらいの印象のテレサ・テンですが、中国語圏では日本人には想像もつかないくらいの偉大な歌手として親しまれていたということですが、これを聴くとそのことが実感できます。
美しい中国語の発音、細やかで情感豊かな歌、優しく暖かい声に魅了され、彼女の早世が改めて惜しまれました。音楽は日本の歌謡ポップスと似たものですが、なかなか美しい曲が揃っており、オーケストラを含む演奏もしっかりしていて非常に完成度の高いアルバムに仕上がっています。こういった音楽に興味のない方にも一聴をお薦めできるものと思います。
北宋の詩人、歐陽修(1007-1072)の「萬葉千聲」に劉家昌がつけた曲は明るい調子のもので、じめじめしないのが好ましく、それをテレサが情緒豊かに歌って楽しませてくれます。今後このアルバムから順次何曲か紹介していきたいと思っています。
( 2005.02.05 甲斐貴也 )