高原 宮沢賢治・三章 |
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海だべがど、おら、おもたれば やつぱり光る山だたぢやい ホウ 髪毛(かみけ) 風吹けば 鹿(しし)踊りだぢやい |
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エキサイトしすぎて指揮台から落ちた、などのエピソードなどで、熱血指揮者としての活躍の方が晩年は有名だった山田一雄さんですが、「和男」を名乗っていた若き日にはむしろ作曲家としての活動の方が知られていたのだそうです。鮫島有美子さんの素敵な日本歌曲のアンソロジー「日本歌曲選集2」にそんな彼の歌曲が9曲収録されて聴くことができますが、その機知と熱情あふれる歌はとても素敵。ここではその中から宮沢賢治の詩に付けた歌を取り上げます。
詩集「春と修羅」の中に取り上げられているこの詩、宮沢賢治作品の中でも比較的有名なものではないかと思います。東北弁の訥々とした響きがとても印象的ですが、山田はこれに追分調のしみじみとしたメロディをつけ、ひそやかにつぶやくような歌にしています。「宮沢賢治・3章」の中では一番古い1940年の作。鮫島(Sp)&ドイチュ(Pf)のこのDENON盤以外の録音は知りませんが、もっとたくさんの歌い手に取り上げて欲しい佳曲です。
( 2005.01.01 藤井宏行 )