Voice of the forest Op.46 |
森の声 |
1 山のいただきは したしい日のさかりに ともされる 桃色に 木は こまかくなごんで 雲の切れ間を 青空で むずぶ 2 木洩れ日のあいだを 雉子がはしる 雪と 枯れ草をしだかせて 山と山のあいだを 水がうごく くぼみは ぬれて みず草がこぼれる 3 あかい森から うた声が ひろがる こまかく柔軟な やがて粉雪は 森を しろくする 4 雪は ほんとうに 訪ねるのである おなじしたしさで 農夫の手にすくわれる 籾種の ひとつ ひとつと 5 ほとけたちは 水にうたれる みずたち 水泡たち 6 うすむらさきの森に 鳥はくちばしをはしらせる よりそうと しらかばは 三つの指で くれていく空をつかむ 7 森は もえるように ねむる 羊がこっそり顔をだす そのとき 羊は かぞえきれない |
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編成:メゾ・ソプラノ、ヴィオラ、ピアノ
曲目解説:
森の声を聴く人の声。「森の声」に歌われる森は、人の生活圏から距離的にはすぐ近くにある森だと思う。耳を傾ければ音が聞こえる近くの森だが、人には把握できないほど様々な声を発している。現代では人間の生活圏からの雑音が増え、森の声がききとれるだけの透明な音の空間が失われつつある。
「森の声」は、江森國友氏の詩集「宝篋と花讃」(1971年)におさめられている。江森國友氏のサイトにもかかげられている。http://www.lapis.co.jp/emori/j/
1999年に当初、メゾ・ソプラノとピアノの編成で作曲し、奏楽堂歌曲コンクールに応募したが予選にて落選。同年、歌のパートはほとんど変更せずにヴィオラを加えて改作。ヴィオラ付き歌曲は、実演に接する機会が乏しいがブラームス等に先例がある。
初演:2002年11月27日 東京 すみだトリフォニーホール 小ホール 「第9回 21世紀 日本歌曲の潮流」(国際芸術連盟主催)。メゾ・ソプラノ:森下麻衣子 ヴィオラ:守重信郎 ピアノ:甲斐万喜子。
再演:2004年3月27日 神戸北野クレオール「MU楽団 近藤浩平作品展 歌曲とピアノ連弾」ソプラノ:美堂舞 ヴィオラ:田代直子 ピアノ:植田浩徳。2004年9月12日 神戸北野クレオール「MU楽団 日本歌曲Vol.1」、ソプラノ:美堂舞 ヴィオラ:木野村望 ピアノ:植田浩徳。
CD:初演のライブ録音がCD「Z21世紀日本歌曲の潮流」JILA-1537に収録されている。
(2004.12.13 近藤浩平)
作曲者プロフィール:
近藤浩平(こんどう こうへい) Kondo Kohei
1965年生まれ。関西学院大学文学部美学科にて畑道也氏に音楽学を学ぶ。国際ピアノデュオコンクール作曲部門入選。山や自然に関わる作品が多い。日本作曲家協議会会員。
http://members.aol.com/R5656m/
主要作品:
「島」「森の声」「3つの木の組曲」「白い岩山への行進第2番」「旅について」「海の笛、山の笛」「木にかえる」「上海の猫」「うみ山のあいだ」「島と山の小品」「吹き流し」「山小屋の4つの窓」
( 2004.12.13 近藤浩平 )