野辺の小唄 |
|
よその娘さんは桜か梅か 花を咲かせてまた咲かす わたしや木かげの名なしぐさ なさけない身よそのまま萎れ 花の咲く日はついぞない 夜ごとひとりで泣くばかり |
|
生田春月は昭和の初めに活躍した詩人で、ハイネやゲーテの詩の翻訳でも活躍した人です。残念ながら38歳で自ら命を絶ってしまいましたが、特にハイネの翻訳詩など、あのどろりとした情念を日本情緒あふれるまるで演歌のような世界で再現していますので今見ても新鮮な驚き、多くの翻訳詩が時代と共に古びて行く中、これは後世に残して欲しい文化遺産だと思います。
そんな春月のオリジナル詩、意外と歌曲の詞にはなっていないようなのですが、この清瀬はそこそこの数の詩を歌曲にしているようです。その中でもこの「野辺の小唄」は代表作なのだとか、しかしながら清瀬保二自体が没後35年以上を経て忘れ去られようとしている中私も耳にする機会を得られずにおります。春月の詩はまさに「小唄」を地で行くなかなか洒落たものであるだけにここはぜひ聴いてみたいところではあるのですが。
( 2017.04.09 藤井宏行 )