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Amazing Grace    
 
アメイジング・グレイス  
    

詩: ニュートン (John Newton,1725-1807) イギリス
      

曲: 民謡/作曲者不詳 (Folksong,-)    歌詞言語: 英語


Amazing grace! (how sweet the sound)
That sav'd a wretch like me!
I once was lost,but now am found,
Was blind,but now I see.

'Twas grace that taught my heart to fear,
And grace my fears reliev'd;
How precious did that grace appear,
The hour I first believ'd!

Tho' many dangers,toils and snares,
I have already come;
'Tis grace has bro't me safe and thus far,
And grace will lead me home.

The lord has promis'd good to me,
His word my hope secures;
He will my shield and portion be,
As long as life endures

Yes,when this flesh and heart shall fail,
And mortal life shall cease;
I shall possess,within the veil,
A life of joy and peace.

The earth shall soon dissolve like snow,
The sun forbear to shin;
But God,who call'd me here below,
Will be forever mine.

驚くべき主の恵み、なんとやさしい響きだろう
私のような罪深き者も救ってくれる
私はかつて迷っていたが、今は神に見出された
何も分かっていなかったが、今は分かる

それは神の恵み、私の心に畏敬を覚えさせ
そして私の恐れを解き放った
なんと素晴らしき恵みの現れた瞬間
私が初めて神を信じられた時よ

多くの危険、苦難、誘惑を乗り越え
私は生きてきた
主の恵みはそんな私に安らぎを与え
そして私を天国へと連れていってくれるだろう

主は私に約束された
主の言葉が私の希望となることを
主は私の盾となり、私の一部となることを
この命が続く限り

そうだ、この肉体と心が朽ち果て
私の人生が終わるときには
私はヴェールに包まれて
喜びと平安の命を頂ける

やがてこの世も終わりがやってきて
太陽がその輝きを止めても
私をこの地上より呼び寄せて下さった神は
永遠に私のものなのだ


ゴスペルの歌手によってよく歌われることからアメリカの歌のように思われていますが、元を辿るとこの歌はイギリスの賛美歌のようです。作詞者の英国人ジョン・ニュートン(1725-1807)の数奇な生涯については様々なサイトで詳しく述べられていますのでここでは触れませんが、奴隷商人から聖職者へ転じ、この詩を書くに至った流れにご関心のある方は” Amazing grace”で日本語のページ検索をしてみて下さい。この曲の日本での人気の高さも感じられ非常に興味深いです。
作曲者は不明ですが、一説によると元の賛美歌ではなく、アメリカに伝わったときに別のメロディを付けて歌われるようになり、それが今に伝わっているのではないかとのこと。その意味ではアメリカの歌と呼んでも差し支えないでしょうか。確かにこのメロディだからこそ今に残ったといえないこともない魅力的な旋律です。

がめつい日本人は、信仰することで学校に受かるとか商売が繁盛するとか、何かご利益がないと神様を信じるという気持ちにならないようですが、あちらの神様は違います。人間の側に「信じる・信じない」の選択肢はなく、「神様の側に信じさせていただく。神様を信じる気持ちにさせて頂いたことそのものが神様の恩寵なのです」という根本的な考え方の相違があります。そのあたりが第2節の「素晴らしき瞬間」のところなのですが、日本語でうまく説明できないので日本的に「私が主体的に神様を信じるようになった」というニュアンスになってしまいました。ここはもうちょっと説明的に訳すと「何と素晴らしきその瞬間、私が神様に選ばれ、信じさせて頂けるようになった時」というのが恐らく正しいです。
そんな視点でこの曲や、その他キリスト教の宗教音楽を読み解くと色々な発見があると思います。

ゴスペル系の音楽は私は詳しくないのですが、R&Bの女王アレサ・フランクリンのまさに神懸ったかのような絶唱、あるいは最近地元のタワーレコードで激安売りされていたゴスペル歌手の歴史的録音集成(Castle Pulse 様々なレーベルの音源を集めていますが、Amazing Graceは1947のBMG音源)に入っていた大歌手マヘリア・ジャクソンの歌う地の底からうねるような迫力のある声が非常に印象的でした。クラシック系ではソプラノのジェシー・ノーマンの十八番ですね。ちょっと上品過ぎるようなところもありますが、それでもなかなかの迫力です。

( 2004.12.05 藤井宏行 )

先日38歳の若さで亡くなった本田美奈子さんの遺作とも言えるのが、岩谷時子さんの日本語詞を付けたこの曲なのだそうです。アイドルポップスの世界からミュージカルに、そしてポップ・クラシカルの世界にと活躍を広げていた彼女のあまりに早い死を悼んでこの詞を捧げます。安らかな平安がありますように。

( 2005.12.12 藤井宏行 )


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