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Der Geprüfte   Op.62-39  
  Das Holdes Bescheiden
試練  
     歌曲集「善き慎み」

詩: メーリケ (Eduard Friedrich Mörike,1804-1875) ドイツ
    Gedichte: Nachlese III  [Der Abgebrannte]

曲: シェック (Othmar Schoeck,1886-1957) スイス   歌詞言語: ドイツ語


Ist’s möglich? Sieht ein Mann so heiter aus,
Dem,was der Väter Fleiss erst gründete,
Was vieler Jahre stille Tätigkeit,
Kraft und Geduld und Scharfsinn ihm gewann,
In einer Stunde frass der Flamme Gier? -
Ihn hebt die Flut des herrlichen Gefühls,
Davon die brüderliche Menschheit rings
Im schönen Aufrur schwärmt und Ehre mehr
Als Mitled zollt verängnishel’gem Unglück.
Es dringt dieselbe Macht,die so ihn schlug,
Die ew’ge,granzenloser Libe voll,
Aus so viel tausend Herzen auf ihn ein,
Und wie zum erstenmal in ihre Tiefe
Hinunter staunend,wirft er lanchend weg
Den Rest der Schmerzen. Ihm hat sich ein Schatz
Im unerforschten Busen aufgetan,
Und nichts besutzend,ward er überreich,
Den nun erst einen Menschen fühlt er sich!
Indem er heute noch,sein neues Glück
Zu baun,den späten Gipfel grüsst,
Magst du,o feige Welt,erkennen,was
Der Mensch vermag,wenn ihn ein Gott beseelt.

信じられるだろうか? この男がこんなに陽気であることを
その父祖たちが努力の末に築き上げ、
さらに長い黙々とした努力と、
体力と忍耐、そして洞察によって得たものを
貪欲な業火により一瞬に焼き尽くされた男が?・・・
すばらしい感情の高潮により彼は昂揚し
兄弟同様の隣人たちが群れ集まり
美しき騒乱のまわりに
運命による神聖なる破滅に同情心よりも敬意を払う
彼を打ちのめしたのと同じ
果てしのない、無限の愛に満ちた力が
幾千もの心から彼の中に押し入ってゆく
そしてその深みの中を、まるで初めてのように
見下ろして驚き、彼は笑って
残された悲嘆を投げ捨てる
彼は自らの量りしれない内面の宝箱を開き
もはや何物も持たないのに大きな富を得たのだ
そして彼は初めてひとりの人間となったことを感じた!
彼は今日、新たな繁栄を築くための最初の石をしっかりと置く
そして彼の魂には既にその後に来る頂点が見えている
知るがいい、臆病な万民よ
神に心満たされたとき人間に何が出来るかを


 「詩集」には含まれていない遺作詩。難解な詩ですが既訳はクラーヴェスの全集盤についていた対訳だけ。それもどうにも筋が通っておらず、イエックリンの全集についている英訳も参考にして考えた挙句、どうやら火災によって全財産を失った男が信仰の力に救われる話ではないかという結論に達して出来上がったのがこの訳です。ご意見など頂ければ幸いです。
 シェックの音楽は詩にふさわしい厳粛なもの。演奏はクラーヴェスの白井光子。

( 2004.12.02 甲斐貴也 )


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