Auf einen Klavierspieler Op.62-31 Das Holdes Bescheiden |
あるピアニストに寄せて 歌曲集「善き慎み」 |
Hört ihn und seht sein dürftig Instrument! Die alte,klepperdürre Mähre, An der ihr jede Rippe zählen könnt, Verwandelt sich im Griffe dieses Knaben Zu einem Pferd von wilder,edler Art, Das in Arabiens Glut geboren ward! Es will nicht Zeug,noch Zügel haben, Es bäumt den Leib,zeigt wiehernd seine Zähne, Dann schüttelt sich die weiße Mähne, Wie Schaum des Meers zum Himmel spritzt, Bis ihm,besiegt von dem gelaßnen Reiter, Im Aug die bittre Träne blitzt - O horch! nun tanzt es sanft auf goldner Töne Leiter! Hört ihn und seht sein dürftig Instrument! |
聴け、そして見ろ、あのみすぼらしい楽器を! あばら骨が一本一本数えられるような おいぼれて痩せこけた老馬が あの少年のタッチによって一変する アラビアの炎熱に生まれた 高貴な種の野生馬に! 引き具も手綱もつけさせず 胴を見せて棒立ちになり、歯を剥いていななき 泡立つ海が天にしぶきを撒くように 白いたてがみを振り乱す それが冷静な騎士に御されるやいなや その眼に苦い涙が光る おお、聴け! 今やそれは黄金の音色の階段を優美に踊りながら昇ってゆく! 聴け、そして見ろ、あのみすぼらしい楽器を! |
痩せた老馬のようなピアノが、優れたピアニストである少年の手にかかるとサラブレッドのように変身するという情景。音楽愛好家のメーリケらしい詩ですが、少年の演奏した曲は何だったのでしょうか。メーリケの愛したモーツァルトのソナタよりも、若きベートーヴェンによる疾風怒濤のピアノ演奏を連想させる詩です。
シェックの作曲はピアニストと古びたピアノの奮闘をユーモラスに描写しています。演奏はクラーヴェスの全集の白井光子。
( 2004.12.02 甲斐貴也 )